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あほうがらす/谷中・首ふり坂

懸賞 2017年 03月 04日 懸賞

あほうがらす/谷中・首ふり坂_f0036354_2310467.jpg池波正太郎著「あほうがらす」と「谷中・首ふり坂」を読了。

「あほうがらす」は多岐多彩な小説世界の枠を精選した11篇からなる短編集だ。
浅野内匠頭の説明のつけようもない二面性を照射した「火消の殿」。
武士として己の立場を貫いた男の生き様を描いた「荒木又右衛門」。
「男振」の習作ともいえる「つるつる」…等
いずれも人間と言うものの不思議さ、運命のおそろしさを江戸情緒あふれる描写で描いた
軽妙洒脱かつユーモラスな作品集で、いつものごとく池波ワールドを堪能した。

あほうがらす/谷中・首ふり坂_f0036354_23111742.jpg谷中・首ふり坂」もやはり11篇からなる短編集だが、
二宮金次郎を主人公にした「尊徳雲がくれ」。
真田騒動(恩田木工)に関連した「恥」と「へそ五郎騒動」。
赤穂浪士に関連した作品は「舞台うらの男」。
そして鬼平犯科帳に先駆けた作品「看板」
…とやはり池波ワールドに欠かせない普遍的なテーマである「人間」の不思議さ切なさがテンポよく描かれていて、池波先生のストーリー運びの見事さに毎度のことながら感服させられる。

なかでも盗賊・夜兎の角衛門が出てくる「看板」が良かった。

しかし、この短編集、池波先生が直木賞を受賞した昭和35年から45年の10年間に書かれた作品集なのだとか。
まさに先生の文体が剛から柔へと変化していく期間であったともいわれている。

その変化を肌で感じながら読み進めていくと、また違った味わいや醍醐味を感じられる。

by Ricophoo | 2017-03-04 22:54 |

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