喋々喃々

懸賞 2009年 03月 29日 懸賞

f0036354_014599.jpg「食堂かたつむり」から1年、小川糸さんの待望の第2作「喋々喃々」を読み終えました。
東京・谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む主人公の栞。
まどかさんに、イメルダ夫人、イッセイさんに猫の小町、誰もがふらりと訪れては、ホッと一息、腰を落ち着けることができる、小さなこの店に、ある日、一人の男性客がやってきます。
その人の名は木之下春一郎さん。
春一郎さんの存在は、いつしか栞の心の中を切なさと、温かさと、やすらぎでいっぱいにしていきます。
愛してはいけない人と知りつつ、心はうらはら、想いは募るばかり。
人を大切に思う気持ち、日々の細やかな暮らしが、谷中という情緒溢れる東京・下町の季節の移ろいとともに描き出される、きらめくような物語です。

二人の恋は、はがゆいようなゆっくりしたスピードで、危うく切なく、歩き出します。
しかし道ならぬ恋に意を結して、一旦は春一郎さんに別れを告げる栞。
その潔さに、本の向こう側からエールを送る私がいて、もうひとりの私は、栞と春一郎さんとのハッピーエンドを望んでいて・・・読み手の心もゆらゆら揺れてしまいます。
本のタイトル「喋々喃々」とは、男女がうちとけて、小声で楽しげに語り合う様子と言う意味だそうです。
その言葉のとおり、季節と時間に、ゆっくりと育まれていく、二人の恋を、
静かで優しい二人の会話をいつまでも、こっそり耳をすませて聴いていたくなります。

「食堂かたつむり」と言えば、次から次へと登場してくる御馳走の数々が印象的でしたが、そこは、やはり小川糸さん!ファンを裏切りません。
副題のように本の帯に書かれていた「おいしいものを、一緒に食べたいひとがいます」
という言葉に「食堂かたつむり」ファンは再度飛びついてしまいます。
この「喋々喃々」も下町の美味しそうな食べ物や、風情のあるカフェやお店が本当にたくさん登場してきます。
五智果、鈴木精肉店のメンチカツ、千駄木倶楽部のあずきオ・レ、オザワ洋菓子店のいちごシャンデ、あなご寿司に熱燗、、アンジェラス、鳥鍋、水茄子、須田の油揚げと飛竜頭、向島百花園のお月見で食べたシュウマイ弁当、根津の旅館での献立、〆鯖の黄身酢和え、枝豆の山椒煮、平茸の松葉刺し、菊の葉の天麩羅、粟麩のしめじ和え、さつま芋の蜜煮、、はたの葛煮と焼き茄子、平目と赤烏賊のお刺身、伊豆牛のすき焼き、、山芋のぬか漬け、ケットバシにつくね鍋、小川糸さんという作家さんは、食べることが大好きで、本当に美味しいものを御存知なんだなあと感心してしまいます。その表現も多岐にわたり、読んでいると、もういても立ってもいられず、谷中近辺を美味しいものを求めて探し歩きたくなってしまいます。

「喋々喃々」は、和モノ好き、美味しいもの好き、そして何より、いくつになってもロマンスを夢見る永遠の乙女な人々にはたまらない一冊だと思います。
いわゆる乙女チック浪漫ちゅうやつです。

by Ricophoo | 2009-03-29 00:04 |

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