きっとここが帰る場所
2012年 07月 07日
渋谷シネマライズでパオロ・ソレンティーノ監督・脚本作品「きっとここが帰る場所」を観てきました。
映画を観ていて「ああ、私はショーンペンが大好きだ!」と改めて思い知らされた映画でした。
一癖も二癖もある人間を演じさせたら、彼の右にでるものはいないのではないかと思っています。
今回もその期待を裏切ることなくまたまた彼はやってくれました!
髪の毛はメドゥーサのように逆立ち、ゴシックメイクで全身黒づくめのファッション。
まるで、キュアのロバート・スミスをおばさんにしたようなショーン・ペンが
キャリア全盛期に引退したロックミュージシャンを演じ、
しかもその彼がなぜか30年音信不通の末死んでしまった父の仇撃ちと称し
ナチの残党狩りにアメリカ縦断をするロードムービーというのですから、
これはショーン・ペンファンならずとも観ないわけにはいきません!
ショーン・ペン演じる引退したロックスター、シャイアンを中心に、
彼を取り巻くちょっと不思議な人々と予測不可能なストーリー展開が
観ていくほどにジューシーさを増して行きます。
またシャイアンの心の変化が、アメリカの壮大な自然や風景の中で、
北から南へと移動していく間に詳らかに描かれて行きます。
親子の問題、愛する者の喪失、ホロコーストといったデリケートで難しい主題も
ナイーブかつコミカルに紡いだ演出でうまさが光ります。
音楽はトーキングヘッズのデイヴィッド・バーン。
彼は劇中、白いスーツに白い靴、そして白髪という、本人役で登場し、
映画と同じ題名の曲を颯爽と歌ってくれます。
80年代のロック好きには、もうたまりません。
この映画では怪優ショーンペンの魅力が余すところなく堪能できるばかりか、
脇を固める納得の俳優陣達の競演が映画ファンの心をくすぐります。
「普通の人々」、「インデペンデンス・デイ」、「ビューティフル・マインド」のジャド・ハーシュ。
また古いところでは「ゴッドファーザーPARTⅡ」、「ミズーリブレイク」、「エイリアン」、「ストレイトストーリー」、「ワイルドアットハート」などに出演した名優ハリー・ディーン・スタントン。
そして、シャイアンの心の痛みを理解し、自らも傷ついているという、このストーリーに大切な役割をもつ、シャイアンオタクのロック少女メアリーという難しい役を演じたのは、U2のボノを父に持つイブ・ヒューソンです。
劇中のセリフもなかなかです。
「身体に悪い事は全部したが、煙草だけは吸わなかった」などクスッと笑えるようなものから、
「寂しさと寂しさは相性が悪い」「人には決断すべき時がある」など心に染みるような味のあるセリフが沢山散りばめられています。
万華鏡のように様々なモチーフを取り込んで、観る者をぐいぐいと予測不能なストーリーテリングで引きつけていく演出、人が人生の中で立ち止り、悩む…その本質的な要素を繊細でセンシティブな世界観で描くパオロ・ソレンティーノ。
私の大好きな、天才ショーン・ペンが見込んだイタリアの若き映画監督のこれからが楽しみで仕方ありません。
http://kittokoko.com/
by Ricophoo | 2012-07-07 21:54 | 映画