人気ブログランキング | 話題のタグを見る

市馬さんに夢中!その2(市馬さん強化週間)

懸賞 2013年 06月 16日 懸賞

市馬さんに夢中!その2(市馬さん強化週間)_f0036354_22141627.jpg先週は、市馬さん強化週間でした。

市馬さんが主任を務める国立演芸場上席 6月7日夜の部を皮切りに、6月10日には銀座ブロッサムで行われた市馬落語集「道頓堀の灯」を。そして4日後の6月14日には、浅草演芸ホール中席 夜の部主任を務める市馬さんの落語を聴きに行きました。
いやぁ、いつもの事ながら市馬さんは良いですね。

今年に入って結構寄席へ足繁く通っておりますが、テレビやラジオなどで活躍する方、所謂ベテランとか大御所と言われる方々の噺を聴くチャンスもあり、確かに「さすが!」と唸らせる納得の落語を聞かせていただくこともありますが、時々「う~ん、これってどうなの?」「もしかして体調が悪いの?」と少しがっかりするような高座も多々ありました。
確かに人間ですから体調の良し悪しや、会場の雰囲気、気持ちの乗り方で、毎回同じように自分の思うような落語や芸を演じることは難しいのだと思います。
しかし、市馬さんは、違います。
いつどこで、どんな噺を聞いてもハズレがありません。
抜群の安定感を誇ります。
その日、市馬さんが主任を務めていれば、たとえ途中にどんなに訳の判らぬ落語を聞かされようが、耐え難いほどの侘しい雰囲気のギター漫談を聞かされようが、観客は耐えて行けます。
それは市馬さんが全てを帳消しにしてくれると信じているからです。
落語界のコスモクリーナーと言っても過言ではありません。

6月7日 国立演芸場 上席夜の部
柳家緑太 「たらちね」
柳亭市江 「黄金の大黒」
三遊亭丈二 「権助魚」
ホンキートンク 漫才
川柳川柳 「ガーコン」
蝶花楼馬楽 「刀屋」
中入り
結城たかし ギター漫談
桂才賀 「鹿政談」
アサダ二世 奇術
柳亭市馬 「猫の災難」

【猫の災難】隣のおかみさんから、鯛の頭と尾を貰った熊五郎。鯛は猫の病気見舞いの残りだと言う。そこへ兄貴分がやってきてざるで隠れた鯛を見て、一匹の鯛があると勘違い。「酒を買ってくる」と飛び出して行く。帰ってきた兄貴分に「鯛の身は隣の猫に持って行かれた」と嘘をつくと、兄貴分今度は鯛を買いに出かけた。その隙に熊五郎は兄貴分が買って来た酒を全部飲んでしまう。熊五郎はこれも隣の猫のせいにしたものの、隣のおかみさんが文句を言いに来てバレてしまう。

師匠の小さんの十八番で有名な「猫の災難」。
一度 市馬さんで聴いてみたかった噺です。初めは遠慮がちに、こっそり酒を飲みだした熊五郎が、酔うほどに少しずつ大胆になっていく様、好きな酒を本当においしそうに味わう様、ろれつが回らなくなっていく様、おしまいには泥酔して眠ってしまう様には大爆笑でした。
酒飲みのちょっとした仕草や下品にならずに泥酔した様子を演じられる市馬さんの芸は、本当にうまい!としか言いようがありません。
いつか師匠を越える市馬さんの十八番になりそうです。

6月10日 銀座ブロッサム 市馬落語集30周年記念「道頓堀の灯」
柳亭市弥 「牛ほめ」
笑福亭鶴瓶 「死神」
正司敏江・若井ぼん 漫才
柳亭市馬 「唐茄子屋政談」

【唐茄子屋政談】道楽が過ぎて勘当された徳三郎。吉原の女や仲間からも見放され、行く当てのない徳三郎が、いっそ死のうと吾妻橋から飛び込もうとすると、叔父に見つかり引き取られる。心を入れ替えて一生懸命働くと約束した徳次郎は叔父から唐茄子を売って来いと命じられる。人の情けや助けを受けて全部売り切った徳次郎が叔父のもとへ帰るが、売り上げ金は全て長屋で暮らす貧乏な女と子供上げてしまったと言う。徳次郎の話の真偽のほどを確かめるべく徳次郎と長屋へ赴く。しかし、その金を因業大家にむしり取られた女は首を括ってしまったという…。

元は大岡政談ですが、落語では政談部分はやりません。
いつもの滑稽噺ではなく、今回は市馬さんには珍しい人情噺という事もあり、また席が少し遠かったため、せっかくの市馬さんの姿がよく見えず、多少自分的には不完全燃焼の部分は否めませんが、今回の「唐茄子屋政談」市馬さんの見せ場は、人情溢れる町人たちが徳三郎の唐茄子売りを手伝ってあげるくだりや、徳次郎が自分の力で最後の2個を売るために吉原田んぼで、独り売り声を練習する場面でしょうか?「とおなす~!とおなす~!」と伸びのある市馬さんの声。それでいて艶っぽい節回しにうっとりと聞き惚れてしまいました。

6月14日 浅草演芸ホール 中席(19:00~途中入場)
柳家小満ん
古今亭志ん陽
三増紋之助(曲ゴマ)
柳亭燕路
柳家小里ん
ロケット団(漫才)
桃月庵白酒 「満員御礼」
翁屋和楽社中(曲芸)
柳亭市馬 「らくだ」

【らくだ】らくだというあだ名の長屋の嫌われ者が、ふぐの毒に当って死んでしまった。
兄貴分が遺体を見つけた時たまたま通りかかった屑屋が、兄貴分に長屋中の香典を集めてくるように強要される。さらに大家の所へ行って「通夜の酒の肴を持って来くるように伝えろ、嫌なら屍骸にカンカンノウを踊らせるぞと言え!」と無理難題を押し付けられる。
嫌々ながらも酒肴や香典をもらってくると、兄貴分は嫌がる屑屋に無理やり酒を飲ませる。
強制的に酒を飲ませられた屑屋は徐々に酔っ払い、やがて酒乱の本性を現して立場が逆転する…。



「らくだ」は、いわずと知れた、あの立川談志師匠の十八番。
こちらも一度ナマで聴いてみたかった一席です。
強面の兄貴分と臆病で人のいい屑屋とのやり取りや、らくだの死を喜ぶ大家夫婦や長屋の住人、八百屋等人の出入りが多い上に酒乱の芝居が入る演者にとってとても難しい演目の一つだとしみじみ思いました。上方では笑福亭松鶴、桂米朝、東京では立川談志、柳家小さん、柳家小三治など、この「らくだ」を十八番にしているのは、所謂名人として万人に知られている錚々たる落語家たちです。
市馬さんの「らくだ」、その錚々たる名人たちに決して引けを取りませんでした。
さすがは市馬さんです。今回、観客を噺の中にぐぐっと引き込んでいく圧倒的な力強さを感じました。
市馬さん、名人への階段をまた一歩、上ったと確信しました。

by Ricophoo | 2013-06-16 21:55 | 落語

<< みをつくし料理帖「残月」   ゴローの登山靴 >>