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みをつくし料理帖「残月」

懸賞 2013年 06月 23日 懸賞

みをつくし料理帖「残月」_f0036354_0194365.jpg6月16日、待ちに待った みをつくし料理帖第8巻「残月」が出ました!
前作「夏天の虹」から1年と数か月ぶり(私にとっては8ヶ月ぶりですが)の新刊です!!本屋さんで「残月」の平積みが目に飛び込んできた時は、嬉しくて「いよっ!待ってましたっ!」と、思わずかけ声が出そうになりました。
本の帯に書かれた「ながらくお待たせしました。つる家は本日より再開です。つる屋店主」の文字に思わず涙です。
みをつくしファンは、この日をどれだけ心待ちにしていた事でしょう!


怒涛の悲しみに暮れた前作「夏天の虹」の切ないラストに涙が枯れるほど号泣しました。
新作「残月」は、いったいどんな物語を奏でてくれるのでしょうか?

艱難辛苦の押し寄せる前作から一転、今回の「残月」は試練、決意、決断、新生を軸にした明るい展開の希望溢れる巻になっています。

また「残月」は、血の繋がった親子、芳と佐兵衛、坂村堂と柳吾、血は繋がっていないけれど本当の親子以上の温かい絆で結ばれた、又次とふき、澪と芳、おりょう夫婦と親方など、形は違えど、いつの時代も変わらない親子の情に、そっと寄り添うような深い作者の思いが込められた巻でした。
そして澪をはじめ、つる屋の人々が新たな気持ちでそれぞれの人生を歩み始める決意をしていく巻でもあります。

芳が物語の中で言います。
「人の気持ちも物事も、全てのことは移ろうていく。仕方のないことだす。」

人は悲しみの中だけに止まっていては生きていけません。深い悲しみも、心の傷も時間が経てば少しずつ癒されていくものです。
変化は時に、とても勇気のいるものです。しかし、それを成長と言うならば、少しずつでも人間は変わっていかなければなりません。
転んだら起き上がり、何度でも立ち上がり前を向いて歩き出さなければなりません。泣いても諦めず、涙を拭いて生きていかなければなりません。その繰り返しこそが人生なのでしょう。人間は思っているほどヤワじゃない。案外逞しいものなのです。

つる屋の人々はそれぞれが心の中に深い傷を持って生きています。その悲しみに寄り添いそれぞれがそれぞれの温かさ優しさに、お互いに支えられて生きています。
しかし、彼らに一番励まされて生かされているのは、何を隠そう、読者である私自身なのです。

みをつくし料理帖は、残りの頁数が少なくなると、頁をめくる速度が極端に遅くなる小説です。
ストーリーの続きは気になるけれど、読み終えてしまったら、もうおしまい。
それは、つる屋の人たちとのお別れを意味しています。
それが嫌で、のらりくらりと、いつまでも残り頁を行きつ戻りつしてしまいます。


みをつくし料理帖といえば涙というくらい泣ける小説ですが
今回の「残月」も、お約束。滝のように涙が溢れ出ました。
数多くの感涙シーンの中から、極めつけ選りすぐりの2シーン。

又次の死から、なかなか立ち直れないふきに対して

「この齢になってわかることだが、残された者が逝っちまった者のためにできる事は、そう多くは無ぇのさ。中でも大事なのは、心配をかけないってことだ」
「その人を大事に胸に留めて、毎日を丁寧に生きようじゃねぇか。身の回りの小さな幸せを積上げて、なるたけ笑って暮らそうぜ。そういう姿を見て初めて、亡くなった人は心から安堵できるんじゃねぇのか。又さんに心配をかけないってのが、ふき坊にできる一番の又さん孝行だと、俺は思うがなぁ」
と言う種市の台詞―。
74ページ、もう序盤から爆涙です。やられました。

りうさんが芳に言う台詞にも感涙、感動の嵐でした。

「親なんてのは、詰まらないものですとも。子には子の幸せがある、と頭で判っていても、それが親の思い描いていた幸せの形と違えば色々考えてしまうんですよ。子が幸せなら自分はどうでも良い、と無理に思おうとすればするほど、逆に親子の絆に囚われすぎて苦しくなるものなんです。」
「子の幸せと親自身の幸せを混同しないことです。いっぱしに成長したなら、子には自力で幸せになってもらいましょうよ。そして親自身も幸せになることです。人の幸せってのは、銭のあるなし、身分のあるなしには関係ないんです。生きていて良かったと、自分で思えることが何より大事なんですよ。」

ああ。りうさん深い。

毎度のことながら涙と一緒に心が洗い流されていくようです。
そして、日常生活で疲弊し、ささくれていた心が、読み終わるころには、まっすぐ素直な気持ちになっていくから不思議です。
みをつくし料理帖は、もはや私の心の処方箋とも言える小説です。

次に、つる屋の人たちに会える日はいつになるのでしょうか?

by Ricophoo | 2013-06-23 00:12 |

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