北八ヶ岳登山(3日目)~下山の哲学の巻~

懸賞 2013年 07月 27日 懸賞

f0036354_13131422.jpg3日目
昨夜は8時頃就寝してから一度も目を覚まさず4時半起床。
明け方まで強い雨が降っていたようですが、ほとんど判らず熟睡しました。
窓の外は、濃い霧がかかっています。昨晩からの雨が心配でしたが、とりあえず雨は止んでいます。少し風が吹いていたので朝食後は霧も晴れて、時々白駒池の美しい景色が見えるようになってきました。

6時に朝食を終え7時半 白駒荘を出発、麦草峠、大石峠から茶臼山を目指します。

f0036354_13142471.jpg2年前麦草ヒュッテの前を通って白駒荘へ向う途中、突然の雷雨に遭い、パニック寸前で麦草ヒュッテへ逃げ込んだことを思い出します。その時は、登山を終えたハイカーの方に雨の中車で白駒池近くまで送ってもらい大変親切にして頂きました。
今日は雷にも遭わずに済みそうです。



大石峠までは岩ゴロで、まあまあ平坦な登山道でしたが、峠を過ぎるとほぼ直登の登山道になり傾斜がだんだんと増して来て、もう青息吐息でした。

f0036354_13141536.jpgそうこうしているうちに茶臼山山頂(2383m)に到着。
山頂標識のある辺りは山林に囲まれていて展望はありませんが、そこから西方へ2、3分で展望台にでます。展望台に着いたら一瞬雲が流れ、中央アルプスから南アルプス、南八ヶ岳の勇壮な眺望を眺めることができました。茶臼山からは一旦下りその後は縞枯山への登りとなります。



f0036354_13155494.jpg縞枯山手前のピーク(2402m)は巨石と巨岩が積み重なる展望地です。素晴らしい景色が広がります。山頂から見下ろすシラビソの樹林帯の眺めは圧巻でした。茶臼山山頂から縞枯山山頂までは45分。縞枯山に近づくにつれ枯れた木が多くなってきます。
この名前の由来ともなっている「縞枯れ」は亜高山帯針葉樹林のシラビソ、大シラビソが帯状に枯れ、その縞枯れの帯が山頂に向って長い年月をかけ移動していく現象です。遠くから眺めると山の斜面に何列もの白い縞が見えます。

f0036354_1316409.jpg2年前は雷が鳴っていたので、この縞枯山には登らず遠くから眺めるだけでしたが、初めて山中に入り、今回山の中から縞枯れを実感できました。自然の織り成す不思議な世界にひたすら感動です。

しかし、この縞枯山、侮れません。
ロープウェイに近い山と言うことで、観光客でも気軽に登れる緩やかな山だと思い込んでいましたが、岩ゴロの急な下りに何度も肝を冷やしました。

途中、ロープウェイからの観光客と見られる普段着の方を多く見かけましたが、中には薄いワンピースのような洋服を着た妊婦さんが居たのには驚きました。
大きな岩に滑ってお腹でもぶつけたら大変です。
「気をつけてください」と思わず声をかけてしまいました。

f0036354_13161488.jpg縞枯山荘でしばし休憩。山で飲むコーヒーの美味しいこと。
雨池峠を通り、ピラタスロープウェイ山頂駅に予定通り12時到着。
今回の北八ヶ岳登山が終わりました。
下りの緊張感が解け、心の底からほっとする瞬間です。去来するものは達成感よりも安心感です。


これは常識中の常識ですが、山は登りよりも下りの方が難しいと言われています。
一般的に登山というと上り坂の「辛さ」や「苦しさ」をイメージしますが、私にとっては登りの苦しさより、下りの恐怖、集中力を持続していく苦しさの方が大きいような気がします。

子供の頃は、岩の上から飛び降りたり、木の根をひょいひょいと避けながら野兎のように山道を駆け下りたりしていた記憶があるほどで、下りの恐怖など感じることはありませんでした。

しかし年齢と共に体力の低下はもとより、視力の低下で、足元がよく見えないこと。時に膝や腰に痛みを感じたりすること。またガレ場で転びそうになったり、木の根に躓いたり、何度もヒヤッとした経験が記憶に刻み込まれていることで、無意識のうちに恐怖感が先に立ち体が萎縮してしまって思うように動けなくなってきました。それを「老い」と呼ぶのならば、残念ながら仕方のないことかもしれません。

五木寛之さんのベストセラー「人間の覚悟」の中に人生を登山に例えた「下山の哲学」という持論があり、とても共感できます。

登山は登頂の一方通行のみならず、安全に下山することができてこそ「成功」したと言えます。

頂上を極めることだけが人生の目的ではありません。
きちんと安全に優雅に山を下りていくことが人間の生き方ではないかと五木さんは指摘されています。

「老い」は成熟と同義だと思っています。
山も人生も同じ。
下山では焦る必要も、人と競争をする必要もないのです。
沢山の休息を取りながら、体力と知恵と経験に合わせ、自分なりの下り方でゆっくりと下山できればいいのかと―。
時間や即物的な価値から離れた聖なる「老い」=「枯淡の境地」を感じながら
苔生した哲学の山で、そう考えました。

3日間、とくに酷い雨にも降られず、お天気もまずまず。タイムスケジュールも余裕でこなせ、怪我もなく皆無事に縦走を終えることができました。
お師匠を初め、仲間の皆さん、山小屋でお世話になった方々、猫のチーコ。全てに感謝です。

by Ricophoo | 2013-07-27 12:49 | 登山

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