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コモラーの掟

懸賞 2013年 12月 21日 懸賞

コモラーの掟_f0036354_0455838.jpg世間では「小諸そば好き」のことを「コモラー」と言うらしい。

何をかくそう私は正真正銘の「コモラー」だ。
週に3、4日は「小諸そば」を食べている・・・っていうか、少しでもランチタイムに職場を出るタイミングを逃してしまうと、ここ半蔵門では、すぐにランチ難民になってしまうので、
小諸そばで食べることが多くなってしまうだけの話だ。

「小諸そば」は、そんな人々を決して拒否することなく、しかも待たせることなく、寂しいフトコロの人でさえ、暖かく誰でもどんな人間でも、やさしく受け入れてくれる
公平中立のいわゆる難民キャンプのような場所である。

なので私は「小諸そば」については、ちょっとうるさい。
いやかなりうるさいかも知れない。

「小諸そば」について語らせたら小一時間熱く語れる自信がある。

今日はそんな私が愛してやまない「小諸そば」のことを書いてみようと思う。

「小諸そば」は主に東京都内の港区・千代田区・中央区に集中し店舗を構える立ち食い蕎麦のチェーン店だ。

「小諸そば」は立ち食いと言っても、立って食べるスペースはほんのわずかしかなく、殆どは椅子に腰掛けて食べる様式になっているので、比較的女性にも入りやすいのが嬉しいところだ。

都内にある立ち食いそば屋には「富士そば」「ゆで太郎」などライバル店も多く、凌ぎを削っているようだが、「小諸そば」は、味と値段、店内の雰囲気といい、そのコスパの高さは、他店と一線を画しているのではないかと私は密かに思っている。
店内には、クラッシックやジャズ、またはイージーリスニング系の音楽が静かに流れていて立ち食い蕎麦屋でありながら、都会的かつアカデミックなイメージ作りも憎いところだ。

私の通っている「小諸そば」半蔵門店の中枢と言えば、なんといっても客から食券を受取り、大声で厨房との連携をとるおばちゃんだろう。
ホールと店先をキビキビと行き来し、客の細かい注文にも臨機応変に対応、各テーブルの葱やそば湯の充填も怠らない。また時に洗い場のおばちゃんへも厳しいダメ出しを行うなど、その司令塔としての役割はACミランに入団する本田も真っ青だ。

センターフォワードは、最後に行う盛り付けなど 厨房の真ん中で采配を振るうチーフ(たぶん)だろうか?

私がトッピングにわかめを入れるのをなぜか暗黙の了解で知っているのは、このチーフただ一人である。(どんだけ常連なのって話だが・・・)
うずらの卵を割る手つきの繊細さにはグッとくることもたびたびだ。

その他、暑い夏でも、コンロの前で、ひたすらそばとうどんをゆで、全身全霊で湯きりをしているナンバー2。

地味でハードな作業にも関わらず、食器返却口で「わざわざありがとうございます」と声出しを欠かさない洗い場担当のおばちゃん。

人当たりのいいテイクアウト担当のおばちゃんと、おばちゃんを支える天ぷら担当のおじさんのツートップ。
店頭テイクアウト部隊もかなり高度な連携が出来ている。

忙しい中でも、「小諸そば」半蔵門店の従業員さん達は、絶妙な均衡を保ちながら、決して流れやリズムを乱さないその見事なフォーメーションには、惚れ惚れするほどだ。

従業員さん達の、その芸術的フォーメーションを今日も維持してもらうため、コモラーとして気をつけなければならないことがある。

コモラーの掟_f0036354_0473644.jpg小諸そばでは、まず食券の列に並び、食券を買ってから更に注文カウンターの列に並ぶのだが、そこで「熱いそばorうどん」か「冷たいそばorうどん」、トッピング名を、端的且つスピーディにおばちゃんやチーフに伝えなければならない。
わずかではあるが、自分もそのフォーメーションに交わる一瞬であるからして、ある意味 緊張感漂う場面でもある。
しかしそんな繊細な場面を前に時に食券を買わずにいきなりカウンターの列に並ぶ無粋な奴がいる。(注意深く他の客の動向を観察していれば分かるはずだ)
これはもう目も当てられない。まさに言語道断である。
司令塔に券売機前での説明作業という無駄な動きを強いてしまうことになる。
フォーメーションの崩壊につながる大変危険な行為だ。
なのでこれだけは入店前にぜひとも確認しておきたい基礎知識だ。

またコモラーたるもの券売機の前でうろたえないということも大切な掟のひとつと言えよう。

春から夏、秋から冬にかけて季節メニューが登場してくるときなどは特に注意したい。
「二色もり」と「二枚もり」の区別がつかずうろうろするやつが出てくるのは、必ず初夏の頃だ。

そうそう、コモラーの一年を通じての楽しみと言えば「小諸そば」で季節の移り変わりを感じ、味あうことだろうか。
二枚もりから「月夜のばかしそば」が恋しくなるのは、涼しい秋風が心地よい初秋の頃。

また「晩秋」の到来を告げるのはゆず胡椒の香り豊かな「香味うどん」の登場だ。

食べ方の注意書きを見ながら食べると美味しさ2倍の「味噌うどん」は今や冬の風物詩とも言える。

いち早く春を感じさせてくれたのは一昨年までメニューにあった「削り昆布と穂付筍のそば」。来春こそは、その復活が強く望まれる。

ここ2、3日は、東京にも霙が降る寒い日が続いている。
こういう日はやはり「小諸そば」だ。(っていうか毎日だろ)

今日は「香味うどん」のうどんをそばに代え、ワカメのトッピング。
今 自分の中でこれは鉄壁のチョイスだと一人ごちている。

食べ終わって店を出ようとしたら、席がまばらに空いているにも関わらず、わざわざ立ったままそばを啜っていた若い女がいた。

彼女もまた筋金入りの「コモラー」であることは間違いない。
すれ違いざま、私は熱い視線を送った。

by Ricophoo | 2013-12-21 00:29 | おいしい

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