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人間国宝展~生み出された美、伝えゆくわざ

懸賞 2014年 02月 01日 懸賞

人間国宝展~生み出された美、伝えゆくわざ_f0036354_13573795.jpg国立博物館平成館で行われている日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展 ~生み出された美、伝えゆくわざ」を見に行きました。

今日、世界で高く評価され認められているメイドインジャパン。
人間国宝とは、その頂点にいる優れたわざや作品を生み出す唯一無二のアーチストと言える人々です。

「人間国宝」は、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の世界で伝統のわざを受け継ぐ優れた工芸家を重要無形文化財の保持者として認定している制度です。
今回は60回記念として物故された重要無形文化財保持者(人間国宝)全104名の方々の名品と併わせて平成館一階の企画展示室では、現在も活躍されている人間国宝、全53名の方々の作品を展示されているという贅沢な展覧会です。
私のような知識のない人間にとって嬉しかったのは、みどころとして3つのテーマで構成されているところでした。

第一章の「古典への畏敬と挑戦」では、国宝・重要文化財を含む工芸の古典の名品と、重要無形文化財の保持者の代表作とを並べて「伝統」がどのように現代に伝えられているのかが分かるような展示となっています。
出土された土器や装飾品などを見ても分かるように日本では古の時代から、花器や茶碗、文箱、または身につける着物など、身のまわりのものに美を求めてきたような気がします。桃山工芸、あるいは茶道具など日本の古典的な工芸品からは、工芸を愛し、その美とともに生きてきた人々の姿がうかがえます。
そうした古典の持つ技と美を目標として、またその造形に影響を受けた人間国宝の方々の作品の数々を、古典の名宝と対峙させて展示されているので古典の威力と人間国宝の妙技に感動もひとしおです。
重要文化財の安土桃山時代の「広沢 志野茶碗」と荒川豊蔵の「志野茶碗」の対比には思わず「どちらも、いい仕事してますね~」と唸りそうになりました。

また江戸中期に作られた友禅染「小袖白縮緬地衝立鷹模様」は、臙脂・藍・雌黄・墨というわずか4色の天然染料でまるで1枚の絵画のような繊細な色彩を表現しています。一方、1954年に製作された田畑喜八の「一越縮緬地鳳凰桐文振袖」は西洋文化の影響を受けつつ、伝統的な友禅技法に寄りながらバリエーションに富んだ化学染料によって鮮やかな色彩と大胆で華麗な模様を描き出しています。
どちらもため息の出るような見事な作品でした。

第二章の「現代を生きる工芸を目指して」では、現代に合った伝統工芸を模索してきた作家たちの作品を、陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸に分け展示されています。
私が今回の展覧会で一番楽しみにしていたのは二代目平田郷陽の「抱擁」です。
平田郷陽の存在を知ったのは数年前「美の巨人たち」という番組で紹介されていた安元亀八と、その弟子平田郷陽の生き人形でした。まるで魂が吹き込まれているかのごとく、そしてあたかも生きている人間のように見える生き人形。江戸中期ごろ盛り場で行われていた見世物興行のため作られていたそうです。その技術の素晴らしさとはうらはらに芸術的な価値を与えられず美術品というより安価な見世物として扱われ、亀八の作品などは興行が終わると廃棄されていたそうです。一度でいいから近くで作品を見てみたいと恋焦がれていた平田郷陽。「抱擁」は、二代目平田郷陽の作品です。体躯を単純化した線でとらえつつ、つややかでなまめかしい女性の本質を象徴的に表現し子を思う母の優しさ、愛情が作品から香り立つようです。見ていて思わず微笑んでしまうような、懐かしさに涙ぐんでしまうような様々な感情が沸き起こってきました。

人間国宝展~生み出された美、伝えゆくわざ_f0036354_1451996.jpg第三章の「広がる伝統の可能性」では九谷焼を継ぐ三代目徳田八十吉の「恒河」、生野祥雲斎の竹華器「怒涛」など作家の創意と工夫によってこれまでの伝統の概念をくつがえす勢いを持つ作品が多く展示されていました。伝統的な「わざ」をベースとしながらも、創作性や個性的なデザインを重視した美の造形に、これからの未来に向けた日本の伝統文化の可能性を深く感じずにはいられませんでした。

伝統を革進し続けた巨匠たちの競演に、日本人の感性の素晴らしさ、細やかさ、向上心を再認識し誇らしい気持ちになりました。

和風総本舗的に言えば、「日本に生まれてよかった!」と思える一日でした。

by Ricophoo | 2014-02-01 13:43 | アート

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