繕い断つ人

懸賞 2015年 02月 01日 懸賞

f0036354_225667.pngヒューマントラストシネマ有楽町で三島有紀子監督作品「繕い断つ人」を観てきました。

「食」をテーマに心に優しい灯をともすような感動を与えてくれた「しあわせのパン」から3作目 「繕い断つ人」で三島有紀子監督が今回は「衣」をテーマに、こだわりを持って生きることの覚悟を、温かさと厳しさを軸に凛とした美しい世界にして見事に描いて下さいました。

舞台は神戸。町の頑固な仕立て屋「南洋裁店」
先代の祖母が始めたこだわりの洋裁店を受け継いだ2代目の店主・市江。
彼女が古びた足踏みミシンで作るオーダーメイドの服は大人気。
だけど職人気質の頑固さが災いし量産はできず、市江の服をこよなく愛するデパートの営業の藤井さんからのブランド化の依頼も断り続けていました。
なじみの客たちはここで仕立てた服と共に年を重ね人生を彩ってきました。市江は先代が作った服を繕う日々で満足していましたが・・・。

最新の流行を取り入れながら低価格の衣料を短いサイクルで大量生産・大量販売を目的にしたファストファッション全盛の現代、町の中に時々化石のように寂れて残されている仕立て屋さんを見かけます。
昭和30年、40年代くらいまでは、子供の服は基本母親の手作り。
父や母の背広や訪問着などは仕立て屋さんで作ってもらうのが普通でした。
自分の服ではなくとも仕立て上げられ届けられた長方形の厚みのある箱を開けるときの厳かな雰囲気を思い出します。

劇中「着る人の顔が見えない服なんて作れません」と市江のセリフにハッとしました。

自分だけのために仕立てられた服は世界に一つだけのもの。とても贅沢なことだったんだと今更ながら思います。

安いファストファッションの服は、それなりに気軽に買えて気軽に着られる利点もあります。
そして飽きたり、汚れたり、破れたら捨てればいいと気軽に考えて、粗末に扱ってしまいます。
逆に作ってくれた人の顔が見えないからかもしれません。

寒さや暑さをしのげれば、人はどんな物を身に着けていても生きていくことはできます。
けれど、たった一枚のお気に入りのシャツや素敵な色のスカートを身に着けることで人はどんなに気持ちが明るくなることでしょう。好きな色やデザインの服を身に着けることで勇気をもらえたり、人に優しくできたりします。服には不思議な魔法が詰まっています。

自分だけのために丁寧に仕立てられた服と共に年を重ね生きていくってとても贅沢で素敵なことです。私もそんな洋服が欲しくなりました。

愛する人との初めてのデートで着たお気に入りの洋服を死に装束にしてほしいという、高校時代の恩師。
一生着られる服、一生添い遂げられる服が一枚でもあるって幸せなことです。
たかが服、されど服、本質的な価値観に気付かせてくれる素晴らしい映画でした。

主演を務めるのは控えめな抑えた演技が光る中谷美紀さん。共演には三浦貴大さん、片桐はいりさん、中尾ミエさん、伊武雅刀さん、余貴美子さん。そして全編に彩られた洋服の数々。市江が作業着として着ている服や外出するときに着ていた服が色合いやデザインがどれも本当にシックでため息が出るほど素敵でした。

by Ricophoo | 2015-02-01 21:59 | 映画 | Comments(0)

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