仁阿弥道八
2015年 02月 15日
サントリー美術館で開催中の「天才陶工 仁阿弥道八」展を観に行きました。
恥ずかしながら私が仁阿弥道八という名前を初めて知ったのは昨年オンエアされたテレビ東京の「なんでも鑑定団」でした。
仁阿弥道八(にんなみどうはち)こと二代目高橋道八は江戸時代後期に活躍した京焼の名工です。
「なんでも鑑定団」に登場したのは、江戸時代以来、あるあると言われても誰も見たことがなかった幻の急須9点のセット。
江戸時代の写本に「足利家茶瓶四拾三品図録」と呼ばれる急須の図解集があり、その中から道八が製作したものだということで、依頼人の方の亡くなった奥様の形見の品だとか。
2千5百万という鑑定金額も驚きでしたが、私の脳裏に焼き付いたのは、その急須の形でした。
ユニークで素朴で力強く、それでいて遊び心の中にある気品が印象的で「仁阿弥道八」という名前が深く私の心に刻み付けられました。
驚いたことに、これまで仁阿弥道八の作品が一同に会する展覧会はほとんどなかったとか。
今回の「天才陶工 仁阿弥道八」展では、ボストン美術館所蔵「モースコレクション日本陶磁」からも12点の仁阿弥作品が里帰りするということで、またとない貴重な展覧会となります。
道八独特の鋭い観察力と卓越した技量を駆使した天才と言われた陶工のユニークでモダンで大胆で、ユーモア冴えわたる作品の数々を堪能してきました。
第1章仁阿弥の父、初代高橋道八
第一章では、道八が陶工として一番影響を受けたであろう父 初代高橋道八作品「銹絵芋頭水指」、また同時代活躍した、仁阿弥の弟・尾形周平の作品「色絵花鳥文急須」、仁阿弥の兄弟子にあたる青木木米(あおきもくべい)の作品などが展示されていました。
第2章 仁阿弥の茶道具と「写し」の技量
野々村仁清以来、京焼の陶工は中国や朝鮮半島のやきものの技法、様式を活かし、上手に写す能力に長けていました。京焼の陶工たちにとって、高級な茶道具の「写し」を再現する技量は成功の鍵を握る重要な能力のひとつであり、仁阿弥もまた「写し」において優れた作品を残しています。 第2章では、仁阿弥道八の面目躍如たる茶道具の数々、なかでも仁阿弥が手がけた「利休七種写茶碗」「色絵花卉図手焙」等の「写し」の精巧さには舌を巻きました。道八の鋭い観察眼、「写し」を自在に操ることのできる技術は全くもって天才のなせる業です。
第3章 仁阿弥の煎茶道具
18世紀後半から19世紀、身分職業を問わず文人たちの間で煎茶道が流行しました。
煎茶道具の需要の高まりに応えるべく、仁阿弥道八も急須や凉炉、煎茶碗を数多く制作しています。
第3章では、道八の煎茶道具を紹介していて、なんでも鑑定団で紹介されていたあの急須9点セットの一部とみられる同じ形をした急須の展示がありました。
添え書きには「最近この急須と同じものが9点発見された」と書いてあり鑑定団の依頼品の出現は仁阿弥道八の研究に深くつながっていることを匂わせました。
第4章 仁阿弥の鉢 懐石の華
第4章では、雪竹文様の手鉢と雲錦手の鉢を中心に、懐石に華やぎをもたらす仁阿弥の鉢が紹介されています。
茶道具の一種である懐石具のなかでも、「鉢」は仁阿弥の個性が強く発揮された器物です。雪の降りかかる竹を描いた雪竹文様の手鉢と桜と紅葉を半分ずつ描いた雲錦手(うんきんで)の鉢は圧巻でした。
第5章 彫塑的作品 置物・手焙・炉蓋
第5章では、仁阿弥の彫塑的作品が展示されていました。
物・手焙(てあぶり)・炉蓋(ろぶた)などの作品は仁阿弥のユーモアと個性でのびのびと表現されたものばかりで思わずくすりと笑みがこぼれます。置くと隠れて見えない底面までもリアルに描写した「色絵猿置物置物」、動物を写実にかたどった「黒楽銀彩猫手焙」「白釉山羊手焙」。茶室に切られた炉を覆う「色絵狸炉蓋」など素晴らしい作品に息を飲みました
第6章 御庭焼の指導者として
仁阿弥道八は自らの五条坂の窯を操業する一方で、地方に招かれ、御庭焼(おにわやき)の指導にも尽力しました。「紀州偕楽園焼(きしゅうかいらくえんやき)」や、讃岐高松藩主・松平頼恕公に招かれて創始した「讃窯(さんがま)」などが知られています。 第6章では、それら御庭焼の作品「染付松霊芝図高杯」、「色絵銹絵桜楓文鉢」などが展示されています。
第7章 新しい時代へ
仁阿弥は五条坂の窯を息子の三代道八に譲り、伏見桃山に隠居して桃山窯を創始・運営し、安政2年(1855)にその生涯を終えました。 三代道八は、父・仁阿弥の作風を受け継ぎつつ繊細な陶技に優れ、四代高橋道八と共に明治時代の京焼を支えました。 現在は、九代高橋道八氏が色絵京焼の茶道具を手がけ活躍なさっています。
第7章では、三代高橋道八の作品「黒釉松葉之図水差指」など先代の作風に学ぶにとどまらず、現代において独自の世界を築こうとする当代道八氏のモダンな中にも気概のある作品を紹介しています。
ユーモア、洒脱、モダン、大胆にして繊細今回の展覧会では、「天才陶工」の名を欲しいまま」にした仁阿弥道八の見事な技に圧倒されました。
若冲、国芳と続き今年は道八 来てます。
恥ずかしながら私が仁阿弥道八という名前を初めて知ったのは昨年オンエアされたテレビ東京の「なんでも鑑定団」でした。
仁阿弥道八(にんなみどうはち)こと二代目高橋道八は江戸時代後期に活躍した京焼の名工です。
「なんでも鑑定団」に登場したのは、江戸時代以来、あるあると言われても誰も見たことがなかった幻の急須9点のセット。
江戸時代の写本に「足利家茶瓶四拾三品図録」と呼ばれる急須の図解集があり、その中から道八が製作したものだということで、依頼人の方の亡くなった奥様の形見の品だとか。
2千5百万という鑑定金額も驚きでしたが、私の脳裏に焼き付いたのは、その急須の形でした。
ユニークで素朴で力強く、それでいて遊び心の中にある気品が印象的で「仁阿弥道八」という名前が深く私の心に刻み付けられました。
驚いたことに、これまで仁阿弥道八の作品が一同に会する展覧会はほとんどなかったとか。
今回の「天才陶工 仁阿弥道八」展では、ボストン美術館所蔵「モースコレクション日本陶磁」からも12点の仁阿弥作品が里帰りするということで、またとない貴重な展覧会となります。
道八独特の鋭い観察力と卓越した技量を駆使した天才と言われた陶工のユニークでモダンで大胆で、ユーモア冴えわたる作品の数々を堪能してきました。
第1章仁阿弥の父、初代高橋道八
第一章では、道八が陶工として一番影響を受けたであろう父 初代高橋道八作品「銹絵芋頭水指」、また同時代活躍した、仁阿弥の弟・尾形周平の作品「色絵花鳥文急須」、仁阿弥の兄弟子にあたる青木木米(あおきもくべい)の作品などが展示されていました。
第2章 仁阿弥の茶道具と「写し」の技量
野々村仁清以来、京焼の陶工は中国や朝鮮半島のやきものの技法、様式を活かし、上手に写す能力に長けていました。京焼の陶工たちにとって、高級な茶道具の「写し」を再現する技量は成功の鍵を握る重要な能力のひとつであり、仁阿弥もまた「写し」において優れた作品を残しています。 第2章では、仁阿弥道八の面目躍如たる茶道具の数々、なかでも仁阿弥が手がけた「利休七種写茶碗」「色絵花卉図手焙」等の「写し」の精巧さには舌を巻きました。道八の鋭い観察眼、「写し」を自在に操ることのできる技術は全くもって天才のなせる業です。
第3章 仁阿弥の煎茶道具
18世紀後半から19世紀、身分職業を問わず文人たちの間で煎茶道が流行しました。
煎茶道具の需要の高まりに応えるべく、仁阿弥道八も急須や凉炉、煎茶碗を数多く制作しています。
第3章では、道八の煎茶道具を紹介していて、なんでも鑑定団で紹介されていたあの急須9点セットの一部とみられる同じ形をした急須の展示がありました。
添え書きには「最近この急須と同じものが9点発見された」と書いてあり鑑定団の依頼品の出現は仁阿弥道八の研究に深くつながっていることを匂わせました。
第4章 仁阿弥の鉢 懐石の華
第4章では、雪竹文様の手鉢と雲錦手の鉢を中心に、懐石に華やぎをもたらす仁阿弥の鉢が紹介されています。
茶道具の一種である懐石具のなかでも、「鉢」は仁阿弥の個性が強く発揮された器物です。雪の降りかかる竹を描いた雪竹文様の手鉢と桜と紅葉を半分ずつ描いた雲錦手(うんきんで)の鉢は圧巻でした。
第5章 彫塑的作品 置物・手焙・炉蓋
第5章では、仁阿弥の彫塑的作品が展示されていました。
物・手焙(てあぶり)・炉蓋(ろぶた)などの作品は仁阿弥のユーモアと個性でのびのびと表現されたものばかりで思わずくすりと笑みがこぼれます。置くと隠れて見えない底面までもリアルに描写した「色絵猿置物置物」、動物を写実にかたどった「黒楽銀彩猫手焙」「白釉山羊手焙」。茶室に切られた炉を覆う「色絵狸炉蓋」など素晴らしい作品に息を飲みました
第6章 御庭焼の指導者として
仁阿弥道八は自らの五条坂の窯を操業する一方で、地方に招かれ、御庭焼(おにわやき)の指導にも尽力しました。「紀州偕楽園焼(きしゅうかいらくえんやき)」や、讃岐高松藩主・松平頼恕公に招かれて創始した「讃窯(さんがま)」などが知られています。 第6章では、それら御庭焼の作品「染付松霊芝図高杯」、「色絵銹絵桜楓文鉢」などが展示されています。
第7章 新しい時代へ
仁阿弥は五条坂の窯を息子の三代道八に譲り、伏見桃山に隠居して桃山窯を創始・運営し、安政2年(1855)にその生涯を終えました。 三代道八は、父・仁阿弥の作風を受け継ぎつつ繊細な陶技に優れ、四代高橋道八と共に明治時代の京焼を支えました。 現在は、九代高橋道八氏が色絵京焼の茶道具を手がけ活躍なさっています。
第7章では、三代高橋道八の作品「黒釉松葉之図水差指」など先代の作風に学ぶにとどまらず、現代において独自の世界を築こうとする当代道八氏のモダンな中にも気概のある作品を紹介しています。
ユーモア、洒脱、モダン、大胆にして繊細今回の展覧会では、「天才陶工」の名を欲しいまま」にした仁阿弥道八の見事な技に圧倒されました。
若冲、国芳と続き今年は道八 来てます。
by Ricophoo | 2015-02-15 16:02 | アート