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落語三昧~上方落語を聴きにいくの巻~

懸賞 2013年 12月 07日 懸賞

f0036354_1441318.jpg今年初めに火がついた落語熱でしたが、月日が流れ冷めるどころか更に過熱し続けており
東京の寄席に留まらず、とうとう上方落語を聴きに大阪までいってきました。
JR東西線「大阪天満宮」徒歩3分、天満天神繁昌亭で行われた第19回「長寿の会」。

鶴瓶さんや才賀さんなど東京の寄席に出演される上方の噺家さんの落語は何度か聴く機会がありましたが、大阪で本物の上方落語を聴くのは初めての体験です。

「長寿の会」は天満天神繁昌亭で既に19回も続いている桂歌之助さんの独演会です。
歌之助さんは桂米朝一門の中堅どころといった感じでしょうか。
歌之助さんは3代目。50代で早世した2代目師匠はあの桂米朝師匠の弟子、端正な語り口と知的ユーモア、鋭い批評性で米朝一門の鬼才と称されていた噺家さんだったそうです。
3代目歌之助さんはその2代目の唯一のお弟子さんです。
大阪の寄席を中心に活動されているようなので、なかなか東京で落語を聴くことはできないため、失礼ながらそのお名前も知らないまま、今回いきなり独演会を聴くという暴挙に出てしまいました。

●森乃石松さん【寄り合い酒】…町内の若い衆が飲み会をしたいが金がない。仕方がないので、めいめい肴を持ち寄って呑む事にしたが、料理に不慣れな男ばかりが集まったために大混乱をきたすという滑稽噺。歌之助さんに、滑舌の悪さを指摘されていた石松さん、それが逆に効を奏し、若い衆の頓馬な感じを際立たせていました。
●桂 歌之助【宗論】…息子がキリスト教信者になってしまい父親は不満でたまらない。今日も番頭さん相手に愚痴っているところに、息子が帰ってきて宗教論争(宗論)になる…。
創作落語かと思っていたら、この「宗論」実は古典の名作なんですね。歌之助さん演じる息子の「主 イエースキリストはー!」という外人牧師を真似たカタコトの台詞が出るたびに場内大爆笑でした。
●桂 歌之助【平家物語 その6】…「長寿の会」では、毎回平家物語を絵巻物のように語っていらっしゃるようです。落語の要素も取り入れながら、まるで歴史の勉強会の様相です。なかなか勉強になります。
中入に「平家転覆を密議した鹿ケ谷会議の行われた年月日」を問う小テストまであるので、話をしっかり聴いておかなければなりません。
~中入り~
●桂 歌之助【くっしゃみ講釈】…講釈師に女性とのデートを邪魔された男が、相棒と相談してこの講釈師を困らせてやろうと企む。コショウの粉を客席から七輪で燃やして煙を演台にあおぎ上げてくしゃみをさせて講釈をできなくし、恥をかかせようと考えた。相棒に言われて男がコショウを買いに行くが、物覚えの悪い男、八百屋の前で自分が何を買いにきたのかも忘れてしまう。やっとのことで思い出したが肝心のコショウが売り切れていた。そこで代わりに「トウガラシ」を買って来て講釈場に行く。丁度 講釈師が「難波戦記」の修羅場にさしかかった時。トウガラシをくすべて煙をあおぎ講釈師の鼻先にゆく、講釈師思わず「ハックション!」くしゃみの連発で講釈など語っていられない。喜んだ二人は講釈師を野次りまくる…。
講談「難波戦記」の節回しも然る事ながら、テンポ、メリハリ、キレの良さ!とにかく面白い!すべてがパーフェクト!歌之助さんの話の上手さに思わず唸りました。

東京で見る上方の落語家さん達は、皆テレビやラジオで活躍しているような人たちばかりで、見ている私たちも、「大阪の落語家さん」というイメージにとらわれすぎていたような気がします。
上方には歌之助さんのような魅力ある落語家さんが、まだまだたくさんいるのでしょうね。
今回、上方落語を本場ではじめて聴いて、大阪の落語と東京の落語の違い、それぞれの良さを目の当たりにしました。
上方落語と江戸落語の一番の違いは、見台(落語家さんの座る場所にある小机)、小拍子(小さな拍子木で普段は見台の上に置かれており、噺の合いの手などに使ったり、雰囲気を変えるために使ったりする)また演出として噺の中でお囃子を盛り込む「はめもの」があることでしょうか。はめものは高座が華やかに彩られるし、小拍子は噺にメリハリがつきます。

東京には落語が常に行われている定席が4つ(国立を入れたら5つ)あります。
上方落語を聴きに行くにあたり、大阪の寄席を探して、びっくりしたことの一つ。
大阪の落語の定席は天満天神繁昌亭が1軒のみということでした。
上方には人気落語家がたくさんいらっしゃるのになぜなのでしょう??
その唯一の定席 天満天神繁昌亭で私が感心したのは、寄席の雰囲気と客筋の良さでした。
寄席もお客さんも、気取りのなさと上品さが共存しているのが感じ取れます。
笑いに関しては、関西独特のはんなりとした寛容さと辛辣な厳しさを併せ持っている感じです。東京の浅草演芸場、新宿末広には決してない雰囲気です。

吉本や花月、松竹新喜劇、大阪は笑いの文化に溢れています。一般市民の人たちでさえ、自らが日常生活で常に笑いを追及している中、あえて落語を選んで聴くというお客さんの姿勢が寄席の雰囲気につながっているような気がします。
演じる方も聴く方も一本筋が通っているというか、目的意識を持っているところが違います。

f0036354_1402626.jpg之助さんは、サービス精神が旺盛で、演目の中の小テストの正解者に歌之助さんのシールをプレゼントしてくれたり公演終了後には、わざわざ出入り口に出てきて挨拶をしてくれました。(握手して一緒に写真まで撮ってもらいました!)
こういうことをしてくれたら、落語家さんとの距離が近くに感じられます。東京の寄席ではありえないことです。
すっかり歌之助さんのファンになってしまいました。

11月29日、大阪で初雪が降るという寒い一日、上方落語を聴いた私の落語熱は更に加速し熱くスパークしました。

by Ricophoo | 2013-12-07 01:41 | 落語

市馬さんに夢中!(その5)

懸賞 2013年 11月 06日 懸賞

f0036354_22414313.jpg10月25日文京シビックホールで行われた「文京シビック寄席 瀧川鯉昇・柳亭市馬 二人会」に行ってきました。

瀧川 鯉津さん…「牛ほめ」 前座は鯉昇さんのお弟子さん鯉津(こいつ)さんです。
前座さんとは思えない風貌と貫禄、落ち着いた話しぶりで「牛ほめ」。面白かったです。

柳亭 市馬さん…「らくだ」 以前にも市馬さんで聞いた古典の名作「らくだ」です。
フグの毒に当たって死んでしまった長屋の嫌われ者の「らくだ」。たまたま訪ねてきた兄貴分が「らくだ」の遺体を発見します。葬式の真似事でもしてやろうと考えた兄貴分は、長屋の前を通りかかった気の弱い屑屋を脅してお通夜の準備をさせようとします。とりあえず葬式の準備が整ったところで兄貴分は嫌がる屑屋に無理やり酒を勧めます。もともと酒乱癖があった屑屋は飲み進んでいくうち、どんどん気性が荒くなり、ついに兄貴分との立場が逆転。兄貴分に説教を始めます…。
屑屋が嫌々ながらも注がれるままにお酒を飲んで酔っ払っていくところは抱腹絶倒。
市馬さんの、いかにも美味しそうにお酒を飲む仕草を見ていると、見ているこちらも本当にお酒を飲みたくなってくるから不思議です。
そんな市馬さん、かなりの酒豪かと思いきや、全くの下戸だというではありませんか!
お酒を飲まないのに、どうしてあんなふうに美味しそうに飲んでいるように見えるのでしょう?市馬さんの鋭い人間観察眼に脱帽しました。
古いところでは京塚昌子、森光子、池内淳子、山岡久乃など、いわゆる「日本のお母さん」と言われる女優さん達は、実はお子さんがいらっしゃらないという事実を知った時の驚きと似ています。
演者からすると「知らないこと」が逆に物事の「真理」を追求し、人々が求めてやまない「理想」をふくらませていくことに繋がっていくのかも知れません。
哲学です。あぁ、やはり市馬さんは凄い人です。

仲入り

小雪さん 神楽…若い女性の神楽は初めてです。とても上手でした。
というか、どうして神楽をやることになったのか、小雪さんの職業選択のいきさつや理由を知りたいと思いました。

瀧川 鯉昇さん 「二番煎じ」…こちらも以前聞いた夜回り部分をほぼ割愛した鯉昇版「二番煎じ」。何度聞いてもお腹がよじれるほど笑えます。
登場した瞬間、一言も喋らないうちから鯉昇ワールド炸裂。ギョロ目と厳つい風貌と独特の間で客席をぐるっと見回すところから既にもう会場内は大爆笑の渦。つかみはOK。
市馬さん同様、お酒を飲む所作、猪鍋をつく仕草のリアル。とにかく食べ物を食べる所作に関して鯉昇さんの右に出る落語家は他にはいないと断言できます。特に熱いネギの芯を吸い込んでやけどするシーン、その芸の細かさに感動すると共に涙を流して笑いました。
たぶんこの鯉昇さんの「二番煎じ」、完成形に近いのではないかと思われます。
次に鯉昇さんの落語を聞く時も、また「二番煎じ」を聞きたいと強く思わせるほどの、ある意味これは「名人芸」と言っても過言ではありません。
そんなわけで市馬、鯉昇の見事な完成形を堪能できたスペシャルな二人会でした。

by Ricophoo | 2013-11-06 22:21 | 落語

落語三昧

懸賞 2013年 10月 14日 懸賞

f0036354_22315818.jpg最近は、いろいろ忙しく寄席通いもままならずに過ごしておりますが
8月の終わりから9月の始めは夢のような落語三昧の日々でした。


●みなと毎月落語会 「柳亭市馬独演会」
8月27日 高輪区民センターで行われた「みなと毎月落語会 柳亭市馬独演会」。
出演は前座の市助さんのみ。あとは市馬さんが3席。市馬ワールド満喫の一日でした。

柳亭市助「出来心」…市馬さんの若いお弟子さんです。後半になるにつれ伸び伸びと演じられていて、とても良かったです。これからが楽しみです。

柳亭市馬
「かぼちゃ屋」…以前市馬さんの落語で聞いた「唐茄子屋政談」「唐茄子売り」の部分を際立たせたお噺。市馬さんの売り声の節回しにうっとり。

「妾馬」…「八五郎出世」ともいいます。後半部分でちょっぴりしんみりさせる方もいらっしゃいますが、市馬さんの演じる八五郎は最後までカラッとしていて気持ちがいいです。

仲入り
「厩火事」…女の言い分、男の本音、昔も今も男と女の考えてる事は、時代を超えてちっとも変わらないんだなあ、なんて考えてくすりと笑ってしまう男女の機微を描いた名作中の名作「厩火事」。市馬さんの演じる髪結いの女房の色っぽいこと!

●「よってたかって夏らくご」(昼の部)
8月31日は有楽町よみうりホール「よってたかって夏らくご」(昼の部)。

柳家フラワー「出来心」…歯切れがよく聞きやすくて前座さんとは思えないしっかりとした落語を聞かせて頂きました。

春風亭一之輔「浮世床」…あまちゃんとガリガリ君の噺をまくらに大爆笑。やはり今一番勢いがある落語家さんです。一之輔ファンの友達も大満足。

桃月庵白酒「首ったけ」…毒の効いたまくらはやっぱり白酒さんでしょうか。紅梅花魁と妓夫の掛け合いが楽しいお噺です。

三遊亭兼好「つぼ算」…この噺は演者の落語家さんの個性で随分カラーが違ってくるように思えます。商人を騙して店を出る詐欺師二人組「いいの買ったね!いいの買ったね!」と独特の憎めない兼好さんの節回しが良いですね。

柳亭市馬「黄金餅」…自分の死後に財産が他人に渡るのを嫌がる僧侶とその財産を奪おうと企む男を通して人間の深い欲望を描いた落語の演目の中でもかなりシュールでダークなお噺です。噺家自身の性格や語り口によって扱いにくいネタ、また語り手を選ぶ噺と言われている中、市馬さんの演じる主人公は病気の隣人を看病する優しい顔と、罪悪感も持たず無邪気に死者から金を奪う非情な顔を持つ男。難しい演目、市馬さんの新たな一面を感じた一席でした。

●「柳の家の三人会」
9月2日には目黒パーシモンホールで行われた「柳の家の三人会」。

柳家小かじ「道灌」…前座が入門するとすぐに教えてもらう滑稽噺だと聞きますが、三代目金馬や5代目小さんなども得意とした噺でもあり、シンプルな基本形というのは実は一番難しいのかもしれません。小かじさんの前座さんには見えない落ち着いた話しぶりにびっくりしました。

柳家三三「お化け長屋」…江戸っ子は見かけとは裏腹に小心で怖がり。長屋の空部屋をめぐって部屋を借りたい男と、借りられては困る長屋の店子の幽霊話での攻防。三三さんの飄々とした語り口が味わい深い落語でした。

柳家喬太郎「夜の慣用句」…喬太郎さんの新作を初めて聴きました。もう言葉に出来ないくらい最高に笑わせてもらいました。東急東横線ネタのまくらから爆笑に次ぐ爆笑。そして喬太郎さんが手がけた新作落語「夜の慣用句」!もう死ぬほど笑いました。若い社員の飲み会に空気を読まない部長が無理やり参加して場を白けさせていく様をコミカルにあきれるほど馬鹿馬鹿しく描いています。そんな訳でその後すっかり喬太郎さんの魅力に取り付かれてしまい、銀座の山野楽器で喬太郎さんのCDをGET。現在喬太郎ワールドにどっぷりはまっています。

柳亭市馬「妾馬」…先日の独演会と同じ演目の「妾馬」でした。
市馬さんの「妾馬」は大好きな演目です。
しかし喬太郎さんの「夜の慣用句」が予想外の隠し玉だっただけに、初めて市馬さんが霞んで見えてしまいました。隠し玉はやはり最後に爆発させるべきだったのかもしれません。

●末広亭 上席(途中入退場)
10月1日 「新宿末広亭 上席夜の部」へ行って来ました。18時 白鳥さんの噺の途中で入場し、19時 市馬さんの落語観てから帰りました。

すず風 にゃん子・金魚(漫才)…昔ながらのしゃべくり漫才。金魚さんの弾けるパワーに元気をもらえます。

初音家 左橋 「つぼ算」…数字が苦手な私は聞くたびに「???」本当によく練られた噺だと感心します。

柳家 喬太郎 「子ほめ」…一度でも喬太郎さんの新作を聞いてしまうと、こうした古典の王道の裏に何かがあるのでは?と期待が高まりますが、正真正銘歴とした見事な「子ほめ」でした。

林家 ペー(漫談)…初の生ぺーさんでした。全身ショッキングピンクの衣装が目に焼きついて離れません。

川柳 川柳 「テレビグラフティ」…また川柳師匠の落語を聞いてしまいました。
とにかく辛抱。

柳亭 市馬 「芋俵」…10月上席と言う事で秋の風物でお芋に因んだ噺で軽く一席。市馬さんのセンスの良さが光ります。


10月25日には文京シビックホールで市馬さんと鯉昇さんの二人会、11月19日には、みなと毎月落語会「志らく・喬太郎二人会、12月26日には「年忘れ 市馬落語集」、そして来年1月25日には「よってたかって新春らくご14、21世紀スペシャル寄席」に行く予定です。
今年始まった落語熱、まだまだ冷める気配はなさそうです。

by Ricophoo | 2013-10-14 22:12 | 落語

国立演芸場 8月上席

懸賞 2013年 08月 14日 懸賞

f0036354_14255968.jpg国立演芸場8月上席 夜の部 会社帰りにふらりと観て来ました。
職場から直ぐの国立演芸場は、この「ふらり」が出来るのが何と言ってもいい所。
今日のお目当ては、三遊亭丈二さんと桃月庵白酒さんと、主任を務める三遊亭円丈師匠の落語です。

出演と演目は以下の通り
前座 三遊亭わん丈さん 「子ほめ」
三遊亭ぬう生さん 「給食費」
三遊亭丈二さん「のめる」
キセル漫談 ひびきわたるさん
夢月亭清麿さん 「東急駅長会議」
柳家小ゑんさん 「アクアの男」
桃月庵白酒さん 「真田小僧」
マジック ダーク広和さん
三遊亭円丈さん 「円丈かぶき噺 白波五人男」

今回の8月上席は主任が円丈師匠ということで、そのお弟子さん達が多く出演するため、普段あまり聴く機会のない新作落語を沢山聴く事ができました。

ぬう生さんの「給食費」は生活に困っているわけではないのに子供の給食費を払わない今どきのモンスターペアレントに、どうにか給食費を払わせようとあの手この手で奮闘する学校の先生のお話。

柳家小ゑんさんの「アクアの男」は品川の水族館を舞台に、魚の餌付けショーのお姉さんに熱を上げる水族館オタクのお話(品川心中を匂わせるサゲが上手かった!)。

夢月亭清麿さんの「東急駅長会議」は、かなりマニアック。東急東横線沿線を利用している人でなければ多分少しも面白くなかったかもしれませんが、私的には大うけでした。

三遊亭丈二さんは「のめる」。
「のめる」が口癖の男と「つまらねぇ」が口癖の男。お互いの癖を直そうと一言でも口癖を言ったら罰金を取ろうと約束をします。お金がかかってるので相手に口癖を言わせようとするあの手この手が笑えます。新作落語の大家を師匠に持つ丈二さんですが、前回聴いた「権助魚」も古典、今回も古典と続いていて、私はまだ丈二さんの新作落語を聴いたことがありません。きっと新作の面白いネタも沢山やられているのでしょうが、軽い話を小気味良く聞かせてくれる丈二さんの古典が私は大好きです。

「真田小僧」は、私が落語の中で好きな滑稽話です。
「お父さんが留守の間にお母さんが、男を家に上げていた」という子供の話に騙されて
「この話の続きが聴きたければお小遣いをおくれ」と言われ、ついついお金を払ってしまうお父さん。邪気のあるようでないような子供とお父さんのやり取りに、わかっていても大笑いしてしまいます。
桃月庵白酒さんの「真田小僧」は磐石です。文句なく面白い!

ヒザ代わりは マジックのダーク広和さん
ダーク広和さんはものすごい勉強家です。
特に江戸時代、もしくはそれ以前の古くから伝わる古典のマジックを国会図書館で資料を集めて研究されているそうです。
そんな昔からマジックがあったということだけでも驚きなのに、古いマジックは今のような便利なグッズがあったわけではないのに現代の私たちが見ても今のマジックと全く遜色がありません。
「え?なんで?どうして?」という不思議な気持ちは時代を越えていくものなのだなあとしみじみ思います。

トリは、お待ちかね三遊亭円丈師匠の「円丈かぶき噺 白波五人男」です。

新作落語は「邪道」とする考え方が支配的な時代に、実験的・前衛的な作風で新作落語のイメージを覆し一世を風靡した円丈師匠。
その後の新作落語の復権は円丈師匠なくしては考えられなかったと言わしめる、誰もが認める大御所です。

しかし寄る年波なのでしょうか?体力温存のために設けられた「小仲入り」、台詞を忘れたときに助け舟を出す黒子さんの待機、羽織の下の腕やら床に書かれたカンペにはびっくりでした。
実際に噺の最中 「…で、なんだっけ?」自作の落語を忘れること数回。
その度にハラハラドキドキさせられました。
もしかしたら、これも実験的・前衛的な師匠の落語の一環なのでしょうか?

しかし高座に上がっただけで、放たれるオーラ、そして何かが起こりそうな予感。
円丈師匠、あの独特のフラはやっぱりスゴイです。

by Ricophoo | 2013-08-14 14:11 | 落語

市馬さんに夢中!(その4)

懸賞 2013年 08月 05日 懸賞

f0036354_225068.jpg8月3日 上野鈴本演芸場 8月上席 夜の部へ行ってきました。
もちろん市馬さんが主任なのは言うまでもありません。
なので贔屓として期間中一席はおさえておきたいところです。
しかも今最もノリに乗ってる勢いのある若手のホープ春風亭一之輔さんも出演されると聞いたら行かないわけにはいきません!一之輔さんファンの友だちに急遽連絡を取り、上野駅で待ち合わせて、お酒とお弁当を買い込んで
いざ鈴本へGO!

上野鈴本演芸場は今回で3度目。
JR上野駅不忍口から徒歩8分ほど
銀座線上野広小路駅A3出口から徒歩1分 中央通り沿いにあります。
鈴本演芸場は3階の客席へ上がるエスカレーターとエレベーター1基があります。客席は285席。両脇が2、3席、真ん中が10席くらいなので出入りがしやすく、客席には折りたたみ式の小さなテーブルが付いています。国立を別にすれば、寄席の中でも鈴本は清潔感もあって客層も割りと感じ良く女性1人でも気軽に入れる雰囲気です。
最前列には誰も座っていなかったのですが最前列にはテーブルがないので私たちは前から3列目の右脇の席に陣取りました。

今回の出演と演目は以下の通り

【柳亭市江さん】「近日息子」…先日の池袋に続きまたまた市江さんです。
与太郎の馬鹿さ加減をもっと際立たせると更に良かったのですが。相変わらず舌足らずが気になります。まくらも池袋と一緒で工夫が欲しいところです。

【太神楽曲芸 鏡味 仙三郎社中】…師匠の土瓶の芸は秀逸です。
地味な芸なのでテレビではあの凄さは判らないでしょうね。ライブで観るに限ります。

【三遊亭萬窓さん】「紀州」…テーマとなる聞き違いをまくらでさり気なく匂わせつつ、サラリと本題に入って行き、ここぞとばかりピンポイントで落ちて行く、萬窓さんの隙のない構成力とサゲのスマートさに唸りました!

【粋曲 柳家小菊さん】粋曲とはいいものですね~。和の粋をしみじみ感じます。
近ごろ親日家の外国人が多くいらっしゃいますが、日本文化の知識に舌を巻くことばかりです。しかしこういう小唄とか都都逸とか三味線の音の間合いとか日本人にしか判らないような気もしますが、刺身とかひじきとか好きな外国人も多くなってきたので都都逸なんて色っぽく唸る金髪美人が、そのうち出てくるかも知れませんね。

【柳家はん治さん】「ろくろ首」…当初出演予定の柳家さん生さんの代演です。はん治さんは初めて聴く噺家さんですが、メリハリがあり、物語の中に観客を上手に引き込んでいく力がある方です。また違う演目で聴いてみたい噺家さんです。

【春風亭一之輔さん】「看板のピン」…平成24年3月、21人抜きの大抜擢で真打昇進して話題になり、その後の披露興行も連日大入りの大成功を収めた、いまや最もエキサイティングな若手のホープと言われている一之輔さん。市川海老蔵似のルックスもさる事ながら観客を突き放すようなクールで毒のあるまくらが堪りません。パンチある落語という印象で、これからの落語界を牽引していくだろうという頼もしさがありました。

【講談 宝井琴調さん】「大岡政談 人情さじ加減」…このお話は落語でも聴いたことがありますが、講談では初めてです。釈台を拍子木で叩き音を出すことにより話にメリハリが付くくらいで、落語と講談の違いがあまり良く判らないのですが、落語でも講談でも大岡政談は、やはりスカッと後味がいいですね。

【漫才 大空遊平・かおりさん】…夫婦漫才って最近少なくなりました。奥さんのマシンガントークに旦那さんがタジタジというお馴染みのパターン。
相方玲児さんが亡くなってしまったという以前に、まあこういう時代ですから、今はもう完全に見ることはできなくなってしまいましたね。正司敏江・玲児の「どつき漫才」!あの激しいバイオレンスシーンが時々無性に見たくなる時があります。(ビョーキ?)

【春風亭正朝さん】「普段の袴」…この落語の舞台となっている骨董屋のある通りがちょうどこの上野鈴本のある中央通りです。昔は神田の筋違御門(万世橋あたり)から上野広小路あたりを御成街道と呼んでいたそうです。将軍家が上野の寛永寺に参拝するルートにあたることから刀剣や兜などを扱う武具商や骨董屋さんが多くあったとか。普段見ている景色も落語を通じて見てみると江戸の風情が漂ってきます。

【マジック アサダ二世さん】…池袋に続き、またまたアサダ先生の登場です!
舞台に出てきてすぐ「夏は汗で手品がやりにくい」とかおっしゃっていたので、今回もまたマジックをやらずに帰ってしまうのかとドキドキしていましたが、いきなり新聞紙に水を入れるマジック、おなじみのトランプのマジックなど2つも披露して下さいました。(こんなにたくさん見せて下さったのは初めてです!)
寄席の最後を務める方を「主任」とか「トリ」とか呼びますが、その一つ前の舞台を務める芸人さんを「ヒザ代わり」と言うそうです。市馬さんのヒザ代わりをなぜかアサダ先生が務めることが多いような気がするのは、気のせいでしょうか?まくらでアサダ先生を「怪しい人」と貶しつつも、多分市馬さんはアサダ先生ファンじゃないかと確信しています。
ご存知ない方は、とぼけたキャラがイメージ的にはマギー司郎と被った方もいらっしゃるかと思いますが、似て非なるもの!言葉ではなかなか言い表せない怪しい感じが堪りません。
アサダ先生は寄席でしか見てはいけない人っていう気がします。

【柳亭市馬さん】「三十石 夢の通い路」
上方の「東の旅」と呼ばれる長編落語の最終部分で京の伏見から淀川を三十石船に乗って大阪の八軒家の浜にたどりつくまでの船中の様子を旅情豊かに描いた落語です。
またこの落語は船頭さんの「三十石舟歌」を美声で節回しの巧みな演者が歌うところが聴きどころ。まさに市馬さんのためにあるような演目です。市馬さんの演じる狭い船内の旅人たちの様子や船頭さんの掛け声や唄を聴いていると、まるで自分もその船に揺られ旅をしているような不思議な気分になります。今回も市馬さんワールドに完全にノックアウトです。歌を歌わせたら天下一品。歌謡曲はもとより、都都逸や相撲甚句も素晴らしい。
歌舞伎の台詞を言わせたら本家がタジタジするくらい上手に演じられます。
舞台に出てきただけで、「待ってました!」とかけ声をかけたくなる。人々の顔から笑いがこぼれ、舞台がぱぁーと明るくなります。華があって色香がある。市馬さんは、まさに落語家になるために生まれてきたような人です。
「三十石 夢の通い路」市馬さんにとって落語は天職だと思わせる一席でした。

by Ricophoo | 2013-08-05 22:51 | 落語

市馬さんに夢中!その3

懸賞 2013年 08月 04日 懸賞

f0036354_14289.jpg7月20日 池袋演芸場 中席 最終日夜の部に行って来ました。
池袋演芸場は池袋駅西口徒歩3分
東武百貨店の隣、ケンタッキーの角を曲がった路地にあります。
92席の椅子席、比較的こじんまりとした寄席でした。

この日の出演は以下の通り

【柳亭市江さん】 市馬さんのお弟子さんです。ちょっと舌足らずが気になります。

【林家まめ平さん】

【漫才 ロケット団】・・・何度か寄席で見ていますが、いつも面白いのに今日はかなり手を抜いている感あり。

【柳家小里んさん】「へっつい幽霊」…ベテランならではの安定感。気品と味わいがある「粋」を感じました。また聴きたい噺家さんです。

【蝶花楼馬楽さん】「犬の目」・かっぽれ…穏やかな話し方に癒されます。中席の期間通じて踊りがなかったからと「かっぽれ」を披露して下さいました。こういう感じ、お座敷遊びみたい(やったことないけど)で粋でいいですね。

【マジック アサダ二世】…おなじみ!アサダ先生。いつもいろいろ道具を用意していても、くだらない話ばかりでマジックをやらないで帰ることも度々。夏は汗でマジックがやりにくいからとそのまま帰ってしまう雰囲気でしたが、最後にトランプのマジックを1個だけ。
アサダ先生を知らない人からは文句が出そうでしたが、これがアサダ先生なんです。

【柳家喬太郎さん】「宮戸川」…好きな人からは熱狂的な支持を受けている喬太郎さん。宮戸川の若い二人の色香のあるシーンを品よく演じられていました。次回は喬太郎ワールド のギャグ&ナンセンスをもっと聴きたいなと思います。次に期待したいです!

【林家木久蔵さん】「天狗裁き」…お父さんの天然は一代限り。多分超えられないと思いますが、古典の正道で頑張ってほしいです。

【林家正蔵さん】「蔵丁稚」…こちらもお祖父さん、お父さんを越えるのは努力だけでは叶わないのをご自身が既に判っていらっしゃる。大きな名前を継ぐことの重圧に葛藤があるのかなと思わずにはいられません。こぶちゃんはこぶちゃんのままでいて欲しい。ちょっと痩せすぎというか、激やせです。どうしちゃったんだろう?

【紙きり 林家正楽さん】


【柳亭市馬さん】「鰻の幇間(たいこ)」…翌々日が土用の丑の日だということで「鰻」の噺。実にタイムリー!季節に合わせた噺の選び方もさることながら、今回の落語も「上手い」の一言。さすが市馬さんです。
太鼓持ちのチャラ系キャラは言うまでもありませんが、騙されたと知った後の、嫌味たらしい物言いに大爆笑。一人の人間の中にある「喜」と「怒」。「明」と「暗」。極端な二面性を際立たせてそれを笑いに変える これぞ市馬マジック!今更ながら市馬さんの人間観察眼の素晴らしさに感服します。

【鰻の幇間】
太鼓持ちの一八。通りで出会った浴衣姿の旦那が誰だか思い出せない。時はちょうどお昼時、昼食でも御馳走になろうと企んで、よいしょを始めた。
湯屋に行く途中だから忙しく長居はできないので近くの鰻屋に行こうという旦那の後に付いて小汚い鰻屋へ。自慢の下駄を脱いで二階に上がる二人。小汚く品のない店だったが、ご馳走になる身の一八は、得意のよいしょで、店と旦那を大いに持ち上げる。鰻が出てきて、しばらくすると旦那がはばかりに立ったので、お供しようとすると、いちいち付いて回るのが鬱陶しい、はばかりくらい一人で行けると言うので、部屋で待つことにした一八。
 いつまで経っても旦那が戻らないので迎えに立つと、先に帰ったという。忙しいと言っていたから仕方がない、お土産や御捻りくらいは置いていったはずだと、帳場に尋ねるが、そんなものはないと勘定書きを持ってきた。勘定が異常に高いので文句を言うと、先の客がお土産を二人前もって帰ったと言う。
仕方がないので、残りの酒と鰻を食べながら、よいしょから一変。怒りの矛先を小汚い鰻屋に向け、怒り大爆発!嫌味を言い続ける一八。
食事を終え、帰るからと自分の下駄を求めると、先客が履いて帰ったと言う。ご馳走になるはずが、まんまと騙された一八…。

by Ricophoo | 2013-08-04 13:55 | 落語

市馬さんに夢中!その2(市馬さん強化週間)

懸賞 2013年 06月 16日 懸賞

f0036354_22141627.jpg先週は、市馬さん強化週間でした。

市馬さんが主任を務める国立演芸場上席 6月7日夜の部を皮切りに、6月10日には銀座ブロッサムで行われた市馬落語集「道頓堀の灯」を。そして4日後の6月14日には、浅草演芸ホール中席 夜の部主任を務める市馬さんの落語を聴きに行きました。
いやぁ、いつもの事ながら市馬さんは良いですね。

今年に入って結構寄席へ足繁く通っておりますが、テレビやラジオなどで活躍する方、所謂ベテランとか大御所と言われる方々の噺を聴くチャンスもあり、確かに「さすが!」と唸らせる納得の落語を聞かせていただくこともありますが、時々「う~ん、これってどうなの?」「もしかして体調が悪いの?」と少しがっかりするような高座も多々ありました。
確かに人間ですから体調の良し悪しや、会場の雰囲気、気持ちの乗り方で、毎回同じように自分の思うような落語や芸を演じることは難しいのだと思います。
しかし、市馬さんは、違います。
いつどこで、どんな噺を聞いてもハズレがありません。
抜群の安定感を誇ります。
その日、市馬さんが主任を務めていれば、たとえ途中にどんなに訳の判らぬ落語を聞かされようが、耐え難いほどの侘しい雰囲気のギター漫談を聞かされようが、観客は耐えて行けます。
それは市馬さんが全てを帳消しにしてくれると信じているからです。
落語界のコスモクリーナーと言っても過言ではありません。

6月7日 国立演芸場 上席夜の部
柳家緑太 「たらちね」
柳亭市江 「黄金の大黒」
三遊亭丈二 「権助魚」
ホンキートンク 漫才
川柳川柳 「ガーコン」
蝶花楼馬楽 「刀屋」
中入り
結城たかし ギター漫談
桂才賀 「鹿政談」
アサダ二世 奇術
柳亭市馬 「猫の災難」

【猫の災難】隣のおかみさんから、鯛の頭と尾を貰った熊五郎。鯛は猫の病気見舞いの残りだと言う。そこへ兄貴分がやってきてざるで隠れた鯛を見て、一匹の鯛があると勘違い。「酒を買ってくる」と飛び出して行く。帰ってきた兄貴分に「鯛の身は隣の猫に持って行かれた」と嘘をつくと、兄貴分今度は鯛を買いに出かけた。その隙に熊五郎は兄貴分が買って来た酒を全部飲んでしまう。熊五郎はこれも隣の猫のせいにしたものの、隣のおかみさんが文句を言いに来てバレてしまう。

師匠の小さんの十八番で有名な「猫の災難」。
一度 市馬さんで聴いてみたかった噺です。初めは遠慮がちに、こっそり酒を飲みだした熊五郎が、酔うほどに少しずつ大胆になっていく様、好きな酒を本当においしそうに味わう様、ろれつが回らなくなっていく様、おしまいには泥酔して眠ってしまう様には大爆笑でした。
酒飲みのちょっとした仕草や下品にならずに泥酔した様子を演じられる市馬さんの芸は、本当にうまい!としか言いようがありません。
いつか師匠を越える市馬さんの十八番になりそうです。

6月10日 銀座ブロッサム 市馬落語集30周年記念「道頓堀の灯」
柳亭市弥 「牛ほめ」
笑福亭鶴瓶 「死神」
正司敏江・若井ぼん 漫才
柳亭市馬 「唐茄子屋政談」

【唐茄子屋政談】道楽が過ぎて勘当された徳三郎。吉原の女や仲間からも見放され、行く当てのない徳三郎が、いっそ死のうと吾妻橋から飛び込もうとすると、叔父に見つかり引き取られる。心を入れ替えて一生懸命働くと約束した徳次郎は叔父から唐茄子を売って来いと命じられる。人の情けや助けを受けて全部売り切った徳次郎が叔父のもとへ帰るが、売り上げ金は全て長屋で暮らす貧乏な女と子供上げてしまったと言う。徳次郎の話の真偽のほどを確かめるべく徳次郎と長屋へ赴く。しかし、その金を因業大家にむしり取られた女は首を括ってしまったという…。

元は大岡政談ですが、落語では政談部分はやりません。
いつもの滑稽噺ではなく、今回は市馬さんには珍しい人情噺という事もあり、また席が少し遠かったため、せっかくの市馬さんの姿がよく見えず、多少自分的には不完全燃焼の部分は否めませんが、今回の「唐茄子屋政談」市馬さんの見せ場は、人情溢れる町人たちが徳三郎の唐茄子売りを手伝ってあげるくだりや、徳次郎が自分の力で最後の2個を売るために吉原田んぼで、独り売り声を練習する場面でしょうか?「とおなす~!とおなす~!」と伸びのある市馬さんの声。それでいて艶っぽい節回しにうっとりと聞き惚れてしまいました。

6月14日 浅草演芸ホール 中席(19:00~途中入場)
柳家小満ん
古今亭志ん陽
三増紋之助(曲ゴマ)
柳亭燕路
柳家小里ん
ロケット団(漫才)
桃月庵白酒 「満員御礼」
翁屋和楽社中(曲芸)
柳亭市馬 「らくだ」

【らくだ】らくだというあだ名の長屋の嫌われ者が、ふぐの毒に当って死んでしまった。
兄貴分が遺体を見つけた時たまたま通りかかった屑屋が、兄貴分に長屋中の香典を集めてくるように強要される。さらに大家の所へ行って「通夜の酒の肴を持って来くるように伝えろ、嫌なら屍骸にカンカンノウを踊らせるぞと言え!」と無理難題を押し付けられる。
嫌々ながらも酒肴や香典をもらってくると、兄貴分は嫌がる屑屋に無理やり酒を飲ませる。
強制的に酒を飲ませられた屑屋は徐々に酔っ払い、やがて酒乱の本性を現して立場が逆転する…。



「らくだ」は、いわずと知れた、あの立川談志師匠の十八番。
こちらも一度ナマで聴いてみたかった一席です。
強面の兄貴分と臆病で人のいい屑屋とのやり取りや、らくだの死を喜ぶ大家夫婦や長屋の住人、八百屋等人の出入りが多い上に酒乱の芝居が入る演者にとってとても難しい演目の一つだとしみじみ思いました。上方では笑福亭松鶴、桂米朝、東京では立川談志、柳家小さん、柳家小三治など、この「らくだ」を十八番にしているのは、所謂名人として万人に知られている錚々たる落語家たちです。
市馬さんの「らくだ」、その錚々たる名人たちに決して引けを取りませんでした。
さすがは市馬さんです。今回、観客を噺の中にぐぐっと引き込んでいく圧倒的な力強さを感じました。
市馬さん、名人への階段をまた一歩、上ったと確信しました。

by Ricophoo | 2013-06-16 21:55 | 落語

よってたかって、一目上がり落語会

懸賞 2013年 04月 21日 懸賞

f0036354_1210424.jpg4月20日有楽町のよみうりホールで行われた「春のスペシャルロングバージョン よってたかって、一目上がり落語会」を観て来ました。
今回は、新入学や新生活を迎える4月、幸先いいスタートを切るために、末広がりの、おめでたい数字の8がテーマです。
「数にまつわる落語8」と言う副題が付いていて、今をときめく人気落語家8名による新作・古典なんでもありの落語会です。




第1番手を務めたのは、林家たけ平さん。
演目は「一目上がり」です。
一目上がり】
ご隠居に掛け軸の褒め方を教わった八五郎。掛け軸に書かれている文字を「結構な讃ですね」と褒めれば一目置かれると言われ、大家の家を訪ね、教わった通りに褒めてみるが「讃」ではなく「詩」だと言われ、次に回った家では一休禅師の「悟(ご)」が綴られていた。さん、しの次は、五と来たら次は六に違いないと思った八
五郎、次に回った家の掛け軸に「結構な六ですね」と言ったら、「馬鹿、これは七福神の宝船だ」と返される。

落語名作集によれば、ここまでが「一目上がり」と言うことになっていますが、たけ平さんは「芭蕉の句(九)」までやったので、実はこの落語は「一目上がり」ではなく本当は「軸ほめ」になります。スタートダッシュで錚々たる共演者を後ろに、若手らしく元気のある落語を聞かせて頂きました。

二番手は、瀧川鯉昇さんです。
3月に新宿末廣亭で鯉昇さんの「ちりとてちん」を聴いて以来、その濃厚な癖の強さと、それでいてサッパリとした後味、浮遊感漂う独特の芸風に完全に嵌りました。
私が市馬さんの次に押している大好きな噺家さんです。今回の共演者の中で一番のベテランなのに、二番手を務めると言う事で「え~!なんで?」と思いましたが、聞いて納得!
演目は鯉昇ワールドを余すところなく堪能できる「二番煎じ」です!
【二番煎じ】
町内の旦那衆が二組に分かれて火の用心の夜回りに出ることになった。
寒風吹きすさぶ中、一回りして番小屋に戻った旦那衆、こっそり用意した酒と猪鍋で秘密の宴会が始まる。しかし急な役人の見回りが来て慌ててその場を取り繕う旦那衆。酒を「煎じ薬」と言ってごまかすが、役人に自分も風邪を引いているといわれ結局、催促されるまま酒を全部飲まれてしまい「煎じ薬はもうありません」と伝える。役人は「では拙者は、もう一回りして来るので、二番を煎じておけ」


火の用心の夜回り部分を大幅割愛して宴会部分がメインの鯉昇式「二番煎じ」。
いいんです!これが見たかったんです!この人ほど、食べ物を食べる所作の上手い噺家は今のところいないと断言できます。まさに鯉昇ワールド全開!

三番手は今をときめく若手のホープ 春風亭一之輔さんです。
演目は一之輔さんの友達だという三遊亭天どんさん作の新作落語「サンタ泥」。
春のスペシャルというのに季節感を完全に無視したクリスマスネタ!
【サンタ泥】
クリスマスイブだというのに金もなく破れかぶれの落語家の天どん。サンタ泥棒を思いつき、押し入った家には母の帰りを待つ貧しくもプライド高い幼い兄弟がいた。
可愛そうに思った天どんは、ピザとケーキを買って一緒に食べることに。そこへ見回りの刑事が訪ねてきて怪しまれる天どんだが…。


幼い兄弟や刑事とのやりとりなど、クールで強烈なギャグを織り交ぜながらのパンチの効いたドタバタネタなのに思わずぐっとくる人情話に仕上がっていて、さすが「王道の中の型破り」として将来の落語界を背負って立つ頼もしさを感じさせる一之輔さんの落語でした。

四番手は春風亭百栄(ももえ)さんです。
初めて聴く百栄さんは落語手帳によると、エキセントリックな新作派だということで、今回楽しみにしていた噺家さんの一人です。
演目は新作落語の旗手、苦肉の策で会場から4つのお題(「四時起き」「魚河岸」「皮の財布」「酔っ払い」)をもらい、突如始まった「4題噺」です。
【四題噺】
朝の四時に魚河岸に行く夫を起こすジャム好きの妻。夫の収入を上げるには値段の高い財布を持つといいと思い込みヤフーオークションで20万円の汚い皮の財布を手に入れることから物語は始まる。収入が増え安心して「止めていたお酒でも飲んだら?」と夫にお酒を奨めたのがいけなかった。酒の席での失敗と財布を無くしたのがきっかけで収入が見る見る減って行く転落人生。ジャムも食べられない生活ですっかり痩せてしまった妻はパート探しを始める。それを見かねた夫は、再び高い財布を買おうとするが、収入が増えてジャムを食べて再び太る妻を思い躊躇する。


やはり今をときめく8人の人気落語家達の夢の競演ですから当然意識するのでしょう。
新作落語の旗手と言われるだけに、乱暴な荒業に出た百栄さん、客席からもらったお題を繋げてのストーリーの組み立ては実に苦しそうでした。
次回を期待したいです。

五番手は三遊亭白鳥さんです。
白鳥さんといえば今年初めに聞いた新作「マキシムド呑兵衛」が印象的でした。
お腹がよじれるほど笑わせてもらったことを思い出し、今回も大いに期待して臨みました。
演目は新作落語「刑務所の5人」。
【刑務所の5人】
刑務所に入ってきたジョージ。粋がる若い新人を迎え入れる5人の囚人達。人どころか、どんなものでも骨抜きにしてしまう指圧師の徳次郎をはじめ、嘘か真か会場を爆笑の渦に巻き込んで笑い死にさせたという罪で服役している落語家の名人。八百長疑惑の罪を被り罪人となった相撲取り。腕がいいが時間がかかり、客からの罵声に逆切れ、客の洋服を切り刻んで刑務所にぶち込まれた紙きり芸人、蕎麦やうどんを食べる物真似が上手く、それを見ていた客がおなか一杯になり帰ってしまうと言うことで営業妨害の罪に問われた芸人など、個性溢れる囚人たち。ある日ジョージの母親が危篤だと知り、一言母親に謝りたいというジョージを何とか母親に合わせてやりたい5人は、それぞれの知恵と力を結集してジョージを脱獄させようとするのだが…?


「マキシムド呑兵衛」ほどではありませんでしたが、期待を裏切らないよく練りこまれたネタに大爆笑。
私の想像ですが、白鳥さんは本や映画をよくご覧になって勉強している方なのだろうなと思います。自分の作られたネタの世界、自分が創造した作品の中の人物を実に活き活きと描き、そして実に上手く演じてくれる。まさに自作自演の映画監督のような落語家さんです。
5人が終わって、ここで仲入り。しばしの休憩です。

今回一緒に行ってくれたのは前に勤めていた職場の友人Sさん。どの落語も手を叩いて笑い転げてくれる芸人が一番喜ぶ関根勤タイプの上客です。そんな彼女は一之輔さんをいたく気に入った様子。
鯉昇さんの芸にも、かなり感激してくれました。残すは市馬さんを彼女が気に入ってくれるかどうか…?フィアンセを親に紹介するような気分です。

仲入り後の六番手は三遊亭兼好さんです。
演目は「六連銭」(真田小僧)。
【真田小僧】
息子が父親に「おとっつぁんの留守におっかさんを訪ねてきたおじさんの話をするが、その代わりにお小遣いをくれ」というから、ただ事ではない話に、ついお小遣いを上げてしまう。話が良いところへくると「ここから先は別料金です」と次々と父親から金を巻き上げていく息子。実は家を訪ねてきたおじさんは按摩(マッサージ師)だと知り息子に騙されたと気づく父親は、説教をするため幼い真田幸村の利発な行ないを例えに息子を諭す。
話だけではわからないからと言う息子に実際に六文銭を置いて説明すると、その六文銭さえ持ち逃げされてしまう。「それを持ってどこへ行くんだ?」と問う父に「焼き芋を買うんだ」と答える息子。「ああ、うちの真田も薩摩へ落ちた…」


兼好さんは、とにかくテンポが良くて歯切れがいい。古臭くない現代の笑いとしての古典落語を直球勝負で、衒いなく、ひたすら陽気に観ているこちらに投げ込んできてくれるので、清々しいほど文句なしに面白い落語家さんです。落語手帳に、兼好さんの魅力は「無邪気なボケキャラ」が突っ走る滑稽噺とありましたが、まさにその通り!ワル知恵のはたらく息子を、嫌味なく憎めない愛すべきキャラクターとして生き生きと演じてくれました。

いよいよ七番手は我らが柳亭市馬さんです。
市馬さんの今日の演目は「七段目」です。
【七段目】
常軌を逸するほど芝居マニアの若旦那は家業そっちのけで芝居小屋に出入りしている。
日常生活でも芝居一色、口から出る言葉は全て芝居のセリフ。
外へ出たきり帰らない若旦那に業を煮やした大旦那が、今日こそ説教をしてやろうと待ち構えていたが、得意の芝居で交わされてしまう。反省するどころか二階の部屋で芝居の練習を始める若旦那に怒った大旦那、小僧の定吉に様子を見に行かせるが、実は定吉も芝居マニアだった。
ミイラ取りがミイラに、定吉と一緒に芝居を始める若旦那だが、一旦役に入ると目が据わり本気モードに入ってしまう。ヒートアップした若旦那刀を抜いて、定吉に斬りかかる。驚いて逃げようと階段から転げ落ちてきた定吉に大旦那が駆けつける。
「さては2階で馬鹿息子と芝居の真似事か!?てっぺんから落ちたのか?」と問う大旦那に定吉「いえ、七段目です」


実は鯉昇さんと同じく「どうして市馬さんがトリを務めず七番手なの?」と疑問に思いましたが、その謎は直ぐに解けました。
今日の落語会は市馬さんの「七段目」のために催された企画なのでしょう。
私生活では昭和歌謡や剣道を愛する市馬さんですが、それと同じくらい歌舞伎が大好きな市馬さん。「七段目」は、もしかしたら市馬さんのためにある落語なのではないかと思ったほどです。
好きこそモノの上手なれという諺がありますが、市馬さんについてはまさにその通り。歌舞伎のセリフ、節回しなど、本職顔負けの上手さに本当に驚きました。
市馬さんは、本当にすごい人です。
声の良さ、間の良さ、所作の美しさ、気品、センス、色気、そして芸人として一番大切な笑いをブレなく取れる才能、全てを兼ね備えた天才です。きっと近い将来、人間国宝にもなれる落語家さんだと確信しました。

トリを務める8番手は、桃月庵白酒さんです。
演目は「富八」(御慶)。
【富八】
富くじに凝っている八五郎が年の瀬に梯子の上に鶴が止まっている夢を見た。鶴の八四五番を買おうとしたが売り切れで、帰り道、易者に占ってもらったら梯子は上に上る時に役に立つのだから鶴の五四八を買うべきだと教えられる。買ってみると千両の大当たり。新年あけて借金を返し、急場で誂えた裃を着込んで知り合いのところへ年始回りに出かける八五郎。新年の長い口上は覚えられないので短い挨拶の言葉を大家に教えてもらう。
「おめでとうございます」の変わりに「御慶(ぎょけい)」。
「どうぞお上がり下さい」と誘われたら「永日(えいじつ)」と断る。
得意になって年始回りをする八五郎だが、友人の辰っつあんに会い同じように「ぎょけい!」と叫ぶと「何を言ったかわからない」と言われ「ぎょけぇったんだ(ぎょけいといったんだ)」と叫ぶ八五郎の発音に(どこへいったんだ)と聴こえた辰っつあん「恵方参りの帰りだ」


白酒さんは、本当に声が良く通ります。広いよみうりホールの会場中に白酒さんの「ぎょけい~~っ!」「えいじつ~~っ!」が響き渡り、観客の大爆笑があとに続きます。

艶のあるいい声ではありませんが、渋さを含んだ声はとても印象的です。
相撲の呼び出しは隅田川に向ってひたすら大声を張り上げることで美声をつくると言われています。高校時代に野球部で大声をだし、ロックやブルース好きが高じ悪声に憧れ、わざわざ、潮風を浴び浜辺で声を枯らす練習をしていたと言うから驚きです。
いつものように毒のある四方山話をまくらに、古典の味わいを感じさせてくれる半面、現代的な落語のセンスを取り入れ、しっかり笑わせてくれる安心感のある落語家さんです。
「正統派の中の正統派」と言われている五街道雲助師匠のお弟子さんだと知り、改めて納得です。

人気落語家8人8笑、いろんな角度からいろんな笑いを堪能させてもらいました。
一緒に行ったSさんからは「まるで8つのオムニバス映画を観ていたようだ」と大絶賛を頂き私もホッと一安心。
もちろん、Sさんにも市馬さんをとても気に入ってもらえました。
落語を聴いて笑っていると日常の嫌なことや抱えている悩みが、本当に馬鹿らしく些細な事に思えてきます。かっこいい生き方やシビアな人生を学びたいのなら芝居や映画で学べます。しかし落語は大所高所から物事を観てかくあるべしと主張してくるものではありません。
人間は弱いもの。完璧じゃないから面白い。いいんじゃないの?ほどほどで!
もっと肩の力をぬいて生きようよ。長屋の通りから八っつあんや与太郎の声が聞こえてきそうです。

by Ricophoo | 2013-04-21 11:48 | 落語

TBS主催 落語研究会 221よ永久に眠れの巻

懸賞 2013年 04月 01日 懸賞

f0036354_23132860.jpg3月28日に国立劇場の小劇場で行われたTBSテレビ主催第537回落語研究会に行って来ました。今回の出演者は桂才紫さん、林家正蔵さん、五街道雲助さん、柳屋花緑さん、そして柳亭市馬さんです。残り少ない当日券で入ったため、席はかなり後ろで、メガネをかけても市馬さんの表情も読み取れません。

しかも前の席には座高の高い221が二人並んで座っています。
背の低い私は何とか221の隙間から覗き込むように体勢を右に左に傾けていましたが、221は、まるでこちらの動きを読んでいるかのように私と全く同じ動きをしてきます。
「ええぇい!221見えんじゃないか!」
「右なら右、左なら左に傾いて座れよ!このぼけがっ!」
心の中で口汚く221を恫喝。
そうかと思うと221の福耳が右に左にぶらぶらと目の前に揺れていて、とにかく目が回る。既に発狂寸前です。
想像の中で、私は何度221の後頭部を殴りつけてやったでしょうか。

そんな中で始まった落語研究会の今回の演目は
桂才紫さんの「武助馬」
林家正蔵さんの「安兵衛狐」
五街道雲助さんの「つづらの間男」
柳亭市馬さんの「藪医者」
柳家花緑さんの「妾馬」
林家正蔵さんは、こぶちゃんだった時のほうが、私は好きでした。少し気負いが入ってる感じで、声にもあまり張りがなく全体的に元気がありませんでした。なにか迷いがあるのでしょうか。
今回楽しみにしていたのが五街道雲助さんの落語です。正統派の中の正統派といわれる落語家だけあって、古典の王道をしっかり聴かせて下さいます。ベテランならではの磨きぬかれた風格と気品で、しっとりとした人情話を堪能しました。

中入が終わっての一席目は我らが市馬さんです。
落語の世界では中入直後の出番のことを「クイツキ」といいます。
休憩時間で一旦離れた観客の心を引き戻さなければならないため技量が必要な役割です。

市馬さんの落語は、いうまでもありません。この人の登場を待っていました!という雰囲気が会場中から感じられました。やはり落語家としての華があるというか、一瞬にして観客の心を惹きつける何かをもっていらっしゃる方です。
今日の演目は「藪医者」。権助と藪医者との、とぼけたやり取りが最高に笑えました。
市馬さんが終わったら、もう一席あるのに、結構たくさんのお客さんが帰って行かれました。もったいないけど、やはり市馬さんだけを目当てに来られている方もいらっしゃるんですね。

とりを務めるのは、柳家小さん師匠のお孫さんでもある柳家花緑さんです。
花緑さんの落語は、今まで聞いたことがありませんでしたが、やはり血筋の良さでしょうか、素直に面白く、のびのびと自然体で演じる姿は清々しさを感じます。
「妾馬」(「八五郎出世」)は笑いあり、涙ありの人情話です。ラスト近くで酒に酔った八五郎が「生まれた子供を一目お袋に見せてやってくれ」と頼むシーンは、思わず涙がでました。
残念なのは、途中221の頭が邪魔で、頭を左右に傾けるのにも疲れ、諦めて目を瞑って落語を聴いていたら、少しウトウトしてしまったことです。
(221!金返せ!)再び心の中で221を恫喝。
今回、座高の高い221達との熾烈な首振りエアバトルで、すっかり疲れてしまいましたが雲助さんも花緑さんも良かったし、市馬さんの落語も聴けたし、まあ良しとしましょう。

by Ricophoo | 2013-04-01 23:03 | 落語

市馬さんに夢中!

懸賞 2013年 03月 30日 懸賞

f0036354_1742431.jpg3月26日代官山の蔦谷書店で行われた「第3回 寺カフェ落語」に行ってきました。
寺カフェというのは、仏教やお寺をもっと身近なものとして感じてほしいというコンセプトのもと川崎にある浄土真宗本願寺派 生田山信行寺が行っているプロジェクトの一つです。
何かに思い悩んでいるのに誰に相談したらいいか判らない。自分の小さな悩みを相談して笑われたらどうしよう?かつてお寺はそんな人々を救う相談場所でした。

しかし、現代人にとってお寺は敷居が高く、すっかり人々から縁の薄い場所になってしまいました。よし!それならお寺の方から街へ出かけよう。いろんなイベントや企画で盛り上げて、人々が、お茶を飲みながら気軽に相談できるような「出張駆け込み寺」にしよう!
それが「寺カフェ」の起こりなのだそうです。

しかし、何ゆえお寺と落語?と思われる方もいらっしゃるかと思います。
昔お坊さんは仏教の教えを楽しく聞いてもらうために、面白おかしくお話をされた方もいらしたそうです。人々はその話の面白さに惹かれてお寺に参ることも多かったといいます。
お坊さんの説法が実は娯楽の要素を持っていて、それがやがて形を変え落語や浄瑠璃、講談、講釈、漫談などの芸能になっていったとも言われています。
お寺は日本の文化の中に実はさりげなく溶け込んでいるのですね。

寺カフェのプロジェクトは今まで寺カフェ@丸の内という期間限定カフェや代官山蔦谷書店での写経会、ヨガなど様々な楽しそうなイベントを開催されています。
こういう楽しい企画から、人々にとってお寺がもっと身近なものとして感じられるようになって欲しいと心から思います。

3月の初めに代官山の辺りをジョギングしていて、立ち寄る予定のなかった蔦谷書店にたまたま入った瞬間「寺カフェ落語」のチラシを目にして雷に打たれたような衝撃を受けました。
第3回寺カフェ落語の出演は、な!な!なんと私の大好きな柳亭市馬師匠ではありませんか!もう、これは運命でしょう。行かずに死ねるか!という意気込みで当日を迎えました。

蔦谷書店2号館のカフェが即席イベントスペースに変身、座席は30席ほど。もちろん一番前に陣取りました。高座との距離は1メートルくらいでしょうか?
市馬師匠の息がかかるほどの距離です!ああ、もう夢のようです。

この日の市馬さんの演目は「御神酒徳利」です。
市馬さんの師匠である人間国宝の小さん師匠やジャイアンツの長島さんの爆笑うっかりネタなどをまくらに、さらりと本題に入っていく上手さがさすがです。

御神酒徳利には上方の流れを組む円生型と易の専門用語もなく小田原宿で逃げ出して終わってしまう小さん型があるそうですが、三代目桂三木助と五代目小さんの両方に師事した、入船亭扇橋師匠に稽古をつけてもらったという市馬さんはその両方のいいところを受け継いだミックス型なのだそうです。(今回は円生型のようでした)

【御神酒徳利】
通い番頭の善六、お店の大掃除で、出しっぱなしにしていた家宝の御神酒徳利を気を利かせたつもりで水がめの中へ入れたまま、すっかり忘れてしまう。
お店では家宝が行方不明だということで大騒ぎに。
家に帰って思い出すが今更言い出せない。そこで賢い女房に知恵を借りた善六は、そろばん占いで一芝居打つことに。なんだかんだで易の大先生として評判が立ち、それを聞きつけた大阪の大店鴻池の番頭が主人の病気の娘の病を占って欲しいと頼んできた。後に引けず旅立つ善六。神奈川宿での泥棒騒ぎがひょんなことから上手く解決し、またまた評判が上がる。上方に到着し、万事休す今度こそおしまいだと思っていいたところ神奈川宿のお稲荷大明神が現れて娘の病気の治療法を教えてくれる。娘は助かり善六は沢山の褒美をもらって江戸に帰ってくる。


市馬さんの落語は、どうしてこうも素晴らしいのでしょう。声がいいし、歯切れがいい。
御神酒徳利には多くの登場人物が出てきますが、一人一人を実に活き活きと演じ分けています。
そして一人一人のキャラクターに言葉では表せないような何か温かいものを吹き込んでくれます。
今回の寺カフェ落語のチラシに「芸は人なり」とタイトルがついていました。
小さん師匠の言葉で「心やましき者は噺家になるな」という有名な言葉があります。
あまり落語の世界に根っからの悪人は出てくることはありませんが、たとえ悪人を演じても、人間として根底にある温かいものを、少しでも吹き込んで演じてもらうと、どこか憎めないほのぼのとしたものを感じることができます。
それができるのが市馬さんです。
人が良くて芸が良い。しかも人の良さが芸の良さに繋がっているのです。

落語が終わって主催者側のゲストの方と市馬さんの対談がありました。
小さん師匠との思い出や、愛用している高座で使用する湯のみの話など、いろんなお話を聞くことができました。(しかも息のかかる距離で!)
素の市馬さんもとても魅力的で人間とし温かく、また気品漂う方でした。
生前の小さん師匠に可愛がられ、いつも行動を共にされていたと言います。
平成23年落語協会の副会長に、異例の大抜擢で就任されたということからも
誰からも愛されるお人柄なのだろうなということが伺い知れます。
ますます市馬さんのファンになりました。
市馬さんの落語を聴け(息のかかる距離で!)、この日は私にとって最高に幸せなひと時になりました。

by Ricophoo | 2013-03-30 17:13 | 落語