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メイプルソープとコレクター

懸賞 2009年 04月 26日 懸賞

f0036354_22365184.jpg私の大好きな写真家にロバート・メイプルソープという人がいます。
ロバート・メイプルソープは、1989年3月、HIVにより43歳と言う若さで夭折した天才フォトグラファーです。
70年代後半から80年代のNYアートシーンを凌駕した作品の数々は、まさにセンセーショナルでエロティック!
光と影が織り成すコントラストは見事で、その構図はどれも、大胆かつ繊細。そして聖と俗を常に追求し続け、エロスとタナトスといった対照的な要素のせめぎ合う緊張感に包まれた作品の数々は、見ているものの心をひきつけて止みません。
中でも「Flowers」は、計算されつくした構図と洗練された色彩で美しい花のフォルムを完璧なまでに表現した作品集です。
女性ボディビルダーのLisa Lyonを写した「Lady Lisa Lyon」はメイプルソープの名を一気に世に知らしめた作品集です。 自らゲイであることを公言していたメイプルソープは、Lisaの 鍛えらあげれた男性的なラインと、たおやかな女性のラインを一つの例にして、様々な「境界線」を解こうとしていたのかもしれません。
またメイプルソープの一つの功績として、同性愛やSMと言った禁断の性を浄化し、作品にし得たことだという評価もあります。
「X-ポートフォリオ」にはスキャンダラスでショッキングな写真が多く収録されています。
「神への冒涜」「猥褻か?」「芸術か?」と世界中に論争を巻き起こした作品集ですが、人間の欲望の極限を捉えた写真には、潔いまでの崇高ささえ感じます。メイプルソープの作品は主にスティルライフ、ポートレート、ヌード、セックスといった、4つのテーマを追求しています。メイプルソープの写真集を目にするたびに、どの写真にも、一貫した「パーフェクトモーメント(完璧な瞬間)」と完全なる彼の美意識が貫かれているように思えます。彼の没後から20年。未だにその写真の持つ存在感は衰えず、今でも写真から伝わるメッセージは私たちを圧倒し、魅了し続けています。
そんなわけで
渋谷のライズXに「メイプルソープとコレクター」というドキュメンタリー映画を観にいきました。
実は、この映画、メイプルソープのドキュメンタリー映画ではなく、メイプルソープの写真家としての運命に大きな影響を与えた、キュレーターでもあり、アートコレクターでもあり、そしてメイプルソープのパトロンでもあった、サム・ワグスタッフのドキュメンタリー映画でした。
歴史ある名家に生まれ、その財力と卓越した審美眼をもった、サム・ワグスタッフは、キュレーターとして、アートコレクターとして、アンディ・ウォーホールなどの現代アートからアフリカの彫刻まで様々なコレクションを手にいれていました。そんなワグスタッフの前に突如現れたのが、NYのロフトでオブジェを製作していた、まだ若いメイプルソープでした。
27歳という年齢差を越え、彼の才能に惜しみない愛情と情熱を注ぎ、パトロンとして、恋人(彼もまたゲイでした)として若き天才写真家をニューヨークのアートシーンヘ送り込み見事に成功へと導いた立役者が、このドキュメンタリーの主人公サム・ワグスタッフなのです。また、評価の低かった写真を芸術としてクオリィティの高いアートとして認められる足がかりを作ったのも、また彼の大きな功績だと思います。

ドキュメンタリーでは、彼らを知る、一流のアートディーラーや、美術館のキュレーターなどが、第一線で華々しい活躍をしたメイプルソープの陰で、あまり世間に知られていなかったワグスタッフの生涯、そして二人の関係などを、当時を振り返りながら証言しています。
なかでも、メイプルソープが無名時代から同棲し、唯一愛した女性と言われているパティ・スミスのインタビューは二人への愛情と慈しみが溢れていて印象的でした。
メイプルソープを成功へ導いたワグスタッフですが、メイプルソープが有名になるにつれてその関係は微妙に変化していきます。彼の財力を踏み台にして天才写真家の名をほしいままにしたメイプルソープは
「自分の名声を見届けるまでは死ねない」という言葉を残しています。

ワグスタッフは、なぜコレクションをするのか?という問いに
「なぜ集めるのか?本当の動機がわかっているコレクターはいないと思います。それは、恋と同様、盲目なのです」と答えています。

エイズに冒されたワグスタッフは亡くなる前の1984年、自分のコレクションの全てをケネディ財団へ売却しました。
しかし、メイプルソープの写真だけは決して手放さなかったと言います。

このドキュメンタリーを見た後でメイプルソープの写真集を眺めてみると、また違った何かが見えてきそうです。

by Ricophoo | 2009-04-26 22:37 | 映画