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よってたかってもりもり有楽町スペシャル15’春

懸賞 2015年 04月 20日 懸賞

f0036354_23224995.jpg4月12日有楽町よみうりホールで行われた「よってたかってもりもり有楽町スペシャル15’春」の夜の部を観てきました。メガネを忘れて急きょビックカメラで双眼鏡を購入。

●林家なな子さん【転失気】開口一番は来月二つ目に昇進するという林家なな子さん。伸びのある声でいたずら好きの小僧を茶目っ気たっぷりに演じていて素直な笑いで会場を沸かせてくれました。

●柳亭市馬さん…【雑俳】この日のメンツからいくとトリを務めるのは当然市馬さんだろうと思っていたら、なんと一番手!(そんなことがあるのは歌謡ショーの時くらい)
兼好さんの話だとこの日の市馬さんは「今日の出番は早いから短めの噺をやろう」と浮かれ気分だったとか。それが原因だったのか市馬さんまさかの大チョンボ!ご隠居と八五郎の掛け合いで行く流れの途中、ご隠居の台詞を一気に飛ばして会場は一瞬「????」固まりました。市馬さんも間違えるんだ!ちょっとホッとしたような。普段は絶対に見られないレアな一瞬に立ち会えたような。なんだかとっても得した気分です。
その後の市馬さん、楽屋でうなだれていたという説、悪びれず嬉しそうに弁当をほおばっていたという説。どっちもありそうでなさそうでそっちのほうが笑えました。

●三遊亭兼好さん…【お見立て】今、社会問題にもなっている「マタハラ」「パワハラ」「モラハラ」「セクハラ」をマクラで取り上げつつ、吉原を舞台にした「お見立て」でくるとは!兼好さんのブラックなセンスが光ります。リズムがあってテンポのいい兼好カラー炸裂でした。

仲入り

●春風亭一之輔さん…【茶の湯】市馬さんが確かに一之輔さんに教えた「茶の湯」。既に跡形も残っていないのだとか。プラス思考で考えるとそのくらい自分の噺にしてしまっているということでしょうか?まずいお茶とお菓子に悶絶するご隠居と定吉の表情がなんとも言えません。双眼鏡を購入して良かったと心から思った一之輔流「茶の湯」でした。

●柳家三三さん…【宿屋の仇討】源兵衛、清八、喜六は酒を飲むのも食うのも遊びに行くのもすべて一緒という悪友 自称「始終三人」。宿屋に泊って飲めや歌えのどんちゃん騒ぎが始まります。たまったものではないのが隣の部屋に泊っている萬事世話九朗という侍。この三馬鹿トリオのはっちゃけぶりと静かな部屋で眠りたい神経質な侍の対比がお見事!
キレの良さと聞き心地の良さはさすが三三さん。

by Ricophoo | 2015-04-20 23:15 | 落語 | Comments(0)

剣客商売

懸賞 2015年 04月 12日 懸賞

f0036354_245698.jpg池波正太郎著「剣客商売」16巻+番外編「ないしょないしょ」「黒白」上下巻
全19巻読了しました。(20巻目の「剣客商売読本」はこれからゆっくりと楽しむつもりです。)

「剣客商売」は池波正太郎氏によって1972年1月から1989年7月まで17年に渡り「小説新潮」で断続的に連載された時代小説です。

「剣客商売」を一言で表すなら「軽妙洒脱」!この一言に尽きます。
ハードボイルドやミステリーの要素も備えつつ、時代小説とは言え、軽やかさと洒落っ気たっぷりの上質なエンターテイメントとして老若男女を問わず大いに楽しめる作品だと思います。


「剣客商売」の物語の舞台は1777年から1787年の江戸。
主人公は無外流の名手、当年とって60歳の老剣客 秋山小兵衛。
四ツ谷の道場を閉め、剣も世も捨て、40歳も年下の「おはる」と再婚し、隅田川の近くの鐘ヶ淵へ隠棲していますが、剣の修行から息子・大治郎が江戸へ戻って道場を構えたのを境に、なぜか様々な事件に巻き込まれ、好奇心旺盛な性格から時には自ら首をつっこみつつ剣をふるって難事件を解決していきます。
 とにかくこの主人公の秋山小兵衛の存在感が半端ない!とにかく粋で鯔背でカッコいいのです!小さな体躯ながらも身軽で色っぽく、情が厚くて気風が良い!そして何といっても剣がめっぽう強い!江戸市中最強といっても良いかもしれません。 剣は強くても決して威張らず、弱きを助け強きをくじく、まさにスーパーヒーローなのです。どこからともなく湧いてくるお金の出どころの不思議はこの際目をつぶるとして、小兵衛のお金の使い方が実にスマート!これで女にモテないわけない!

風雅な構えの一軒家に何不自由なく暮らせるだけの経済力、立派に独り立ちした息子。若くて可愛くて従順で料理上手な妻。信頼できる仲間や友人たちに囲まれ、酒やグルメを楽しむ小兵衛のライフスタイルは男性ならずとも私たちが憧れる「理想の老後」のすべてだと言っても過言ではありません。 

「剣客商売」のもう一つの楽しみは物語の中に登場する料理です。
たとえば根深汁(ねぎの味噌〈みそ〉汁)と大根の漬物と麦飯。 おはるの作る鴨鍋と鴨ご飯。柚子切り蕎麦、韮の味噌和え、浅蜊のぶっかけ、葱入り炒り卵、泥鰌鍋や軍鶏鍋、山椒をふりかけただけのシンプルな大根鍋等々…。

また「不二楼」や「元長」「鬼熊」など老舗料亭や馴染みの小料理屋で供される料理もさることながら、甘いものにも目がない小兵衛だけあって江戸市中のその土地土地で売られている名物や名もなき茶店で供される饅頭や甘酒にも心奪われました。
両国米沢町 京桝屋の「嵯峨落雁」、目黒不動門前 桐屋の「黒飴」、市ヶ谷田町 笹屋長蔵の「巻狩りせんべい」など実際に存在したのかしなかったのか定かではありませんが、これらは読書中、自分の頭の中で何度も味わった忘れられない「味」となっています。

時は江戸時代ですから豪華な料理が出てくるわけではありませんが、そこは食通として有名な池波先生です。とにかく物語の中でさりげなく描かれる料理の数々にはすっかり心と胃袋を鷲掴みにされてしまいました。

また「剣客商売」は息子大治郎をはじめ弥七に傘徳、鰻の辻売りの又六、田沼意次など小兵衛をとりまく家族や仲間のキャラクターも魅力の一つです。
小兵衛の愛妻「おはる」、女武芸者から大治郎の賢妻に変貌を遂げる「美冬」の二人はこの「剣客商売」にはなくてはならない二大アイドルです。
「おはる派」「美冬派」と言えば「剣客商売」ファンなら膝を突き合わせて小一時間は語り合うことができるのではないでしょうか?
私は、おはるも美冬も大好きなのですが、忘れてはいけないのが「手裏剣お秀」!私が大好きな登場人物の一人です。

作中一回きりしか登場しない悪役にもきらりと光る忘れられない魅力溢れた個性の持ち主が沢山いました。
「まゆ墨の金ちゃん」の三浦金太郎、「鬼熊酒屋」の熊五郎、「妖怪小雨坊」の伊藤郁太郎、「その日の美冬」の岩田勘助等々…
恐ろしければ恐ろしいだけ、気持ち悪ければ気持ち悪いだけ、その印象的なキャラクターが物語に
(毒)華を添えてくれました。

「剣客商売」を読んでいる途中、夢中になればなるほど「なぜもっと早く「剣客商売」に出会わなかったのか?」と自分自身に歯嚙みするような思いを感じました。
しかし、読了後「今、この時に「剣客商売」に出会えた幸せ」を実感することができたのも事実です。

実に17年の長きにわたって描かれてきた物語ですから、第1巻の小兵衛と第16巻の小兵衛は17年の歳月と共に少しずつ心も体も自ずから変化していきます。

意気軒昂だった60歳の小兵衛が少しずつ肉体の衰えや変化を感じ、精神的にも少しずつ枯淡を感じ始めていく様は読み進めていくほどに切なくなってきます。
これは30代、40代の読者では本能的に感じることができない感覚であるような気がします。

50代に入り「老い」や「死」を身近に感じることが多くなってきたこの頃
小兵衛に自分自身を投影させることができてきたからなのでしょうか?

寒い冬が嫌いになり、炬燵から出られなくなる小兵衛。眩暈に苛まれながらも二十人斬りを成し遂げる小兵衛。老いを俯瞰し諦めつつも、自分自身でありつづける小兵衛に、剣客として常に「死」を意識しながら生きる姿勢に、作者である池波正太郎氏の人間観察の奥深さ、人生哲学を、美学を感じずにはいられませんでした。

「剣客商売」は蕎麦屋で蕎麦を肴に冷酒をちびりちびりの「粋」が分る大人になったら必読の大人の教科書なのかもしれません。

by Ricophoo | 2015-04-12 01:55 | | Comments(0)