ニシノユキヒコの恋と冒険
2006年 10月 22日
今更っていうか
川上弘美さんの「ニシノユキヒコの恋と冒険」を読んだ。
いよいよ文庫になったのだ。
ニシノユキヒコは稀代な女たらしだ。
それでもって真実の愛を探して止まない男だ。
女を虜にしてしまうのに、最後には必ず女に去られてしまうダメ男だ。
悪い男で、ろくでなしで、悲しい男なのだ。
だけど優しくて、かっこよくて、素直で、セクシーで、とにかく
魅力的なほおっておけない男性だ。
彼が愛した(?)、また愛された(?)10人の女性達が
振り返るニシノユキヒコとの思い出の日々。
妙齢の専業主婦ササキサユリさんに言わせると
「女自身も知らない女の望みを、いつの間にか
女の奥からすくいあげ、かなえてやる男。」それが
ニシノユキヒコなのだ。
そんな男性が現われたら、どんな女性もイチコロである。
だけど彼は決して「人を愛せない人間」
「決して自分だけのものにはならない人間」であることが判り去っていく女たち。
解説の最後にあった言葉が、このニシノユキヒコを語る
総てのキーワードだと思う。
「ニシニユキヒコとは、私達が掴み損ねた愛の名前。
あるいは亡くした時間そのもの。」言いえて妙である。
この小説は、女性が大切にしまっておきたい、
たとえば、ちっちゃなキャラメルのおまけとか、
思いで深い銀の指輪とか、そんなあらゆる宝物を入れる小箱のような小説だと思う。
なので単純に男性が読んだらどんな感想をもつのか
とても気になる。
by Ricophoo | 2006-10-22 21:41 | 本