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シュルレアリズムの真髄

懸賞 2006年 11月 11日 懸賞

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上野の森美術館に
「生誕100周年記念 ダリ回顧展」を観にいった。



スペイン・ガラ=サルバドール・ダリ財団と、アメリカ・サルバドール・ダリ美術館所蔵の
世界2大ダリコレクションが一堂に集められた
それは素晴らしい美術展だった。

今回も音声ガイド機を借りて
鑑賞したので、作品についていろいろなことを
聞きながら、じっくりと作品に触れることができた。

20世紀美術界、最大の奇才として知られるサルバドール・ダリ(1904-1989)。
ピンと反り返ったヒゲと、かっと見開いた大きな目。
奇抜な振る舞いや独特の物言いが奇才といわれる所以であるが

若いうちから(まだシュルレアリズムを知る以前から)
彼独自の表現方法を用いて、さまざまな幻想的で非現実的、
はたまた精神錯乱的な世界を描き、異彩を放っていた。
「六つの本当の鏡の中に仮に映し出される
六つの仮想の角膜によって永遠化される、背後から
ガラを描く背後から見たダリ」(題が長すぎる!)や

「記憶の固執の崩壊」「夜のメクラグモ」など
ダブルイメージや、溶け出すような柔らかな物質を描いた
作品が特に有名だが

奇才、奇抜な・・・というより
作品の中に秘められた、ダリ自身の叫び
メッセージが深く込められている。

病弱な子供時代、幼い頃無くなった母への想い
父へのエディプスコンプレックス、
ヨーロッパの芸術をもってしても戦争を止められなかった
悲しみ、怒り。
すべてを崩壊させてしまう原子爆弾への衝撃
アインシュタイン物理学への傾倒
様々なメッセージや想いが
一枚の絵の中に幾重にも重なっている。

ナポレオンの鼻が実は
遠くを歩いている妊婦の形だったり。
三美神の顔の一部が馬になっていたり。
作品の中に「おかあさん、おかあさん・・・」と小さく
書かれている作品があったり。

一枚の絵を遠くから見たり、近くから見たりするだけでも
ひとつひとつ発見や、新鮮な驚きがある。

違ったいくつもの意味を重ねるダリの表現は、
それだけ鑑賞する側にとって、奥の深い作品になっているのだろう。

作品の中に時折登場する女性、ガラ。
ダリの生涯創作のミューズであった妻ガラは
ダリの作品の中に無くてはならないパワーや
エネルギーあるいはモチーフとして存在し
ダリに力を与え、彼を支えた素晴らしい女性だ。
妻であり、女神であり
同志であり、よき理解者であり、
一卵性双生児であり、なにより、母であったのかもしれない。

ガラの死後、描かれた
「燕の尾とチェロ」は、しんとした静寂に包まれた
寂しい作品だった。それまで観てきた
エネルギーに満ち溢れた彼の絵ではなかった。
すっかり製作意欲を喪失したダリは
「ガラは死んでいない、決して死んだりはしない」
とつぶやいていたという。
それだけガラという存在がダリに大きな影響を与えていたのだろう。

人は愛する相手によって人生が大きく変わる。
ダリはガラによってどんなにか自分の芸術が高みを極めたかを
「世界教会会議」の絵の中で、ガラを描くことで表現している。

ガラの死から7年後
ダリも後を追うように逝ってしまった。

すべての芸術の源は
「愛」にある。

by Ricophoo | 2006-11-11 10:05 | アート

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